“四つどもえ”を勝ち抜いたアニキが、三つどもえの重圧を打ち砕く。J2札幌は29日、札幌・宮の沢で戦術練習などを行った。J1昇格が懸かる12月3日の最終節・東京戦(札幌ドーム)で先発出場が濃厚なMF河合竜二主将(33)は、03年横浜時代にJ1第2ステージ最終節で鹿島、磐田、千葉(当時市原)との4クラブでのV争いを勝ち抜いた。経験豊富なメンタル操縦術でチームをけん引し、J1切符を呼び込む。

 J史上最も激しいV争いを乗り越えたキャプテンがいれば、怖いものはない。決戦を4日後に控えた戦術練習。河合は主力組のボランチに入り、機を見てゴール前に飛び出した。合間には芳賀、砂川らとポジショニングを確認。最後は石崎監督とマンツーマンで話し合い、準備を整えた。

 雰囲気は上々だ。前節26日は湘南に勝ち、27日には徳島が0-3で敗れた。勝ち点65で並んだが、得失点で2差をつけて3位に浮上。得失点差で上回ったことで断然、優位に立った。「勝利に集中できることは大きい。東京はいい選手が多いけど、合わせるのではなく、今まで自分たちがやってきたことをしっかり出したい」。J2王者相手に、ここまで積み重ねてきたすべてをぶつける。

 重圧の中での戦いは熟知している。03年11月29日、J1第2ステージ最終節。8年前のこの日、横浜の一員として、4チームを巻き込んだ優勝争いの中にいた。試合開始前の順位は3位。首位磐田との決戦では先発出場し、前半2分に自らのミスで先制点を献上。それでも結束は乱れなかった。結果はロスタイムのFW久保の得点が生きて逆転優勝。「ミスはしたけど、思い切ってやれば結果は出る。東京戦も重圧はあると思うが、まず自分が緊張しないで思い切ってやること。そうやって、チームを引っ張っていけたら」。どんなに強い相手にも、失敗を恐れずに突き進むことで道は開ける。

 ここにきて、頼もしい仲間も戻ってきた。湘南戦で3カ月ぶりにMF芳賀が戦列に復帰。この日は、徳島ミニ合宿で負傷離脱したGK高木貴が完全合流した。07年昇格に貢献した2人だ。「苦しんできた2人が戻ってきたことは大きい。雪も降らないですし。僕らに流れがきている」。天候悪化を想定し、準備していた室蘭入江への日帰り調整も行わずに決戦に望めることになった。運は、ある。あとは残り90分に全力を出し切るだけだ。【永野高輔】