<天皇杯:横浜4-0松本山雅>◇4回戦◇17日◇富山

 準々決勝進出を大勝で決めた後だった。横浜イレブンは自軍サポーターへのあいさつ後、松本山雅ファンの待つスタンド方向へ向かった。視線の先には急性心筋梗塞のため8月に死去した松田直樹さん(享年34)の背番号3の旗が揺れている。頭を下げると大きな拍手を浴びた。松田さんの古巣対決は天皇杯優勝のための大きなステップだった。

 前半28分、18歳FW小野裕二がゴール右隅に先制弾を決めると、止まらない。後半28分にも右足、同30分にはヘッドとハットトリック。さらに同42分には中村へゴール前に絶妙のパスと全4得点に絡んだ。松田さんの古巣対決には「複雑な気持ちもあった」という。「でも『試合を楽しめ』とマツさんも言っていた。山雅の分も優勝したい」と意気込んだ。

 4点目を決めたMF中村も思いは一緒だ。「マツさんの気持ち、山雅の選手、サポーターの気持ち、願いもこもっている。その気持ちを大事にしたい。マツさんに見られて恥ずかしくないプレーをしたい」と頂点を見据えた。リーグは5位に終わり、ACL出場には優勝しかない。松田さん、そして松本山雅の思いもすべて力に変える。【今井貴久】