<J1:横浜2-1札幌>◇第10節◇6日◇日産ス

 横浜MF中村俊輔主将(33)が今季初ゴールで、チームを3連勝に導いた。前半22分に左足を豪快に振り抜き、札幌を下して、勝率を3勝4分け3敗の五分に戻した。今季、J公式球が変わり、慣れるのに時間がかかっており、悩む間にチームは開幕7戦勝ちなしと低迷した。気持ちを吹っ切らせてからチームも3連勝と、調子は上向きだ。

 体が浮き上がるほど、思いっきり左足を振り抜いた。前半22分、FW大黒のシュートを相手GKがこぼす。MF斎藤が追い付き、後ろにボールを流す。後方から駆け込んできた中村の前へ。相手DF2人が必死に足を伸ばしてきたが、一瞬早く左足がさく裂。コースを狙う中村にしては珍しい、パワフルシュートがネットを揺らした。

 これまで、負け続けて喜べなかった男が、両手を上げ、ガッツポーズしながら、最高の笑顔を見せた。左手を突き上げ、派手に動いた。「ボールがいいところにきたからね。とりあえず(勝率を)チャラに戻せたことはよかった」。

 今季は悩みが尽きない。開幕前は「裏を狙う選手が多いから、今年はおもしろいよ」と、04年度以来8年ぶりの優勝を感じさせた。それが、いざふたを開けると、クラブワースト記録更新の開幕7戦勝ちなし。中村は2列目からボランチまで中盤を幅広く使い、前線にボールを送り続けた。試合で中盤は支配したが、勝てなかった。

 第3節で鳥栖に0-1で負けた直後「選手間でミーティングをする必要がある」と言ったが、実行しなかった。司令塔として1つの悩みを抱え、チーム全体を見渡す余裕をなくしていた。

 「実は、今年は狙ったところに正確にいかないことがある。ボールが重く感じる」

 今季からJリーグは、公式球をアディダス社の「スピード・セル」から同社「タンゴ12」に変更した。どちらも440グラムだが、繊細な中村の指先の感触は、重く感じた。

 「僕の技術がそこまで。努力してもうまく蹴られないから、あきらめるしかない」。そう吹っ切れたのは、先月下旬。自分のこだわりを捨て、チームを見た。少しずつ、選手の心は同調し、わずかずつ結果に結びついてきた。

 「今はピンポイントで蹴られないから、やさしく蹴って、だれか頭で決めてもらうしかない」。我慢の日は続く。「タンゴ12」を狙ったところに届けるまで、今後も1人残って蹴り続ける。【盧載鎭】