<J2:山形5-1鳥取>◇第17節◇2日◇NDスタ

 ゴールデンルーキーが離れ業をやってのけた。山形は1-0からMF宮阪政樹(22)が後半3分、8分に立て続けにFKを直接ゴール。中押し、ダメ押し弾で鳥取を粉砕した。チームも09年のJ1開幕戦で磐田に6-2と大勝して以来、J2では08年5月31日に横浜FCを5-2で下して以来の5発快勝。京都が引き分け、千葉が敗れたため、再び首位に浮上した。

 新人らしからぬ風格が漂っていた。1-0の後半3分、ゴール前約20メートルのFK。宮阪は迷いない助走から体を左斜めに倒してカーブをかける。柔らかいボールは相手の壁を巻くと急激に落下。横っ跳びしたGK小針の脇をすり抜け、ワンバウンドでゴールに沈んだ。

 5分後、やや距離のあるFKでは相手の「虚」を突いた。中央付近に集まったDF西河、DF石井らターゲットマンに、DF石川とともに視線を送り続ける。まるで「クロスを上げるよ」のサイン。だが右足から蹴り出されたボールはゴールに向かってグングン伸び、ネットに突き刺さった。「タツさん(石川)に言われた通り、中に合わせるしぐさを見せて蹴った」。サラリと言ってのけたが、石川は「言われてできるのは、ねえ。キッカーがいいから」とFKの名手として、後輩をたたえた。

 FKで1試合2得点は人生初だが、今季は5点中4点がFK弾。誰もが認める山形のプレースキッカーになった。「でも、昔はFKを決めるイメージはなかった」と、教え子の活躍をピッチ脇で見守った恩師は懐かしそうに口を開いた。東京の長島コーチ。一昨季まで3年間、山形ヘッドコーチを務めた名参謀は、東京U-15、18監督時代に宮阪を指導した。

 出会いは11年前のジュニアユースのセレクションだった。「当時は坊主頭でね。(ヘアスタイルから長崎の名門校にちなんで)国見君って呼んでたよ。今と基本スタイルは同じで展開力があった。中1の時のフランス遠征で決めたように、ミドルシュートもあった」。ただ、FKに関しては現東京MF大竹らと比べて、特出した武器ではなかったという。「一番うまいやつを抜こうと頑張ったんでしょう。努力する子だったから」。プロになってからも石川に追いつけ追い越せの日々で技術を磨いている。

 チームもJ2では08年5月31日の横浜FC戦以来の5得点。首位も1節で奪い返した。努力でつかんだ宮阪の2発が原動力になったのは間違いない。【湯浅知彦】