<J1:仙台1-1C大阪>◇第31節◇7日◇ユアスタ

 これがベガルタの底力だ。仙台がホームのC大阪戦を1-1の引き分けに持ち込んだ。1点ビハインドの後半45分にMF菅井直樹(28)が値千金の同点ヘッド。首位広島が勝ったため勝ち点差は2に開いたが、逆転優勝へ貴重な勝ち点1を獲得した。次節17日のアウェー鹿島戦に勝てば、クラブ史上初のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場が決まる。

 梁の右足から放たれたボールの先に、誰よりも高く跳ぶ菅井がいた。頭でたたきつけ、ゴールにねじ込む。少しだけ喜びながら、足はもう自陣へ向いていた。「追いついて、優勝争いに絡む中では最低限の勝ち点1。それよりも、早く追加点を、と思った」。アシストの梁も「最後に勝ち点1を取ったことをプラスに捉えたい」と言いつつ、笑顔はなかった。勝てなかった、という思いの方が強い。

 確かに、押し込みながら引き分けた。それでも、だ。試合終了間際のゴール。そんな歓喜の瞬間が今季、特に仙台で何度も繰り返されてきた。手倉森監督は「最後の最後、1点取れたこと、追いつけたことは、大きな勝ち点1にしないと。ユアスタでこういった劇的な時間帯に点が入るのは、みんなの力が結集したおかげ」と、サポーターの後押しに感謝する。ホームでドラマチックな試合が多いことについて、同監督は以前「そうやって、ユアスタは負けられない場所になっていくんだ」と誇らしげに話したことがあった。実際、今季は9勝6分け1敗。絶対的な地の利が、優勝争いを大きく後押ししている。

 次節17日、鹿島に勝てば、クラブ史上初めてのACL進出となる。手倉森監督は08年の就任当初から「5年でACL」を掲げてきた。公約達成はもう目の前に迫っている。ただ、今の仙台がそこで満足するはずもない。「勝ってもおごらず、負けても切り替えて、常に全力を出し切る覚悟でやってきたから、この位置にいる。残り3戦に対して、このシチュエーションの中でも、優勝を諦めずに進むことが大事」。逆転優勝だけを信じて戦い抜く。【亀山泰宏】