鹿児島キャンプ中、父の悲報で実家に戻っていた磐田のMF山本康裕(23)が14日、磐田市内で行われた練習に合流した。練習前、チームメートに天国の父に優勝を届ける決意を語り、気丈にトレーニングに励んだ。突然の別れに「一生受け入れられない」と悔しさをにじませる一方、長男として家族を支え、サッカーでも父に優勝報告することを誓っている。

 父祐彦(まさよし)さんが55歳で死去したのは、鹿児島キャンプ中の今月6日だった。自営の工場で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。山本康はすぐにチームを離れ、悲しみの再会。この日、再合流した。チームメートの前で「チームとして優勝を天国にいるおやじに届けられれば」と決意を語り、気丈にトレーニングに励んだ。

 山本康

 1人で倒れていたみたいで…。倒れたときにはもう、心臓が止まっていたと。家族だれ1人(最期に)会えなかったのですけど…。でも、すぐに家に帰れておやじに会うことができたので、周りの皆さんに感謝しています。

 磐田ユース時代の06年、クラブ最年少の16歳10カ月25日でトップデビュー。昨年4月、J通算100試合出場を果たした際、父が花束贈呈のプレゼンターを務めてくれた。

 山本康

 子供のころからずっと試合を見に来てくれて、すごく怒られましたし何回も泣かされて。今回もこのような形でまた、おやじに泣かされて…。最初から最後まで泣かされ続けたけど、気を使って支えてくれたし、私生活でもすごくよく面倒をみてくれた。感謝の気持ちは100試合の時に伝えることができた。でも、まだまだこれから話したいこと、一緒にやりたいことはいっぱいあった。

 突然の別れを受け入れるには時間がかかるが、しっかり前を向き続ける。集まった親戚に「お父さんに顔つきが似てきたね」と言われたことがうれしいという。

 山本康

 一生、受け入れられないけど、長男として家族を守っていかなければ。母も残されてすごく苦しい思いをしているので。この先の不安はいっさいないです。家族みんなで乗り越えて、おやじの分まで頑張りたいと思います。僕自身の活躍はもちろん、チームとして優勝というものを天国のおやじに届けられればいいなと。