<ACL:江蘇舜天0-0仙台>◇1次リーグE組◇12日◇南京

 仙台が“クラブ史上最高難度”の敵地から勝ち点を持ち帰った。完全アウェーの洗礼を受けながら、必死にゴールを守りきった。MF佐々木勇人(30)、ヘベルチ(24)、ジオゴ(26)、DF蜂須賀孝治(22)の初スタメン4人衆もたくましさを見せて奮闘。故障者を抱える苦しい台所事情は続くが、南京での90分間は間違いなくチームの糧となるはずだ。

 9日の鹿島戦から中2日という日程を考慮し、手倉森監督は大胆に先発を入れ替えて臨んだ。3トップの右に佐々木、2列目にはヘベルチ、中盤の底にジオゴ、左サイドバックに蜂須賀。4人の新戦力はいずれも加入後初スタメンだったが、随所に持ち味を見せた。

 佐々木はスピードを生かした裏を突く動きや、ミドルシュートで攻撃を活性化。G大阪時代からACL6年連続出場とあって「陸上トラックがある分、客席と距離があるから何か飛んでくる心配がなかった」と笑い飛ばす余裕を見せた。相手サポーターのレーザーポインター照射についても「ガンバ時代もヤット(遠藤)さんとかがやられてましたからね。海外なら普通でしょ」と平然。最後は「みんなビックリしただろうけど、いい経験になったと思う」と、うなずいていた。

 助っ人2人もまずまずの働きを見せた。ヘベルチは得意の左足で積極的にゴールを狙い、セットプレーも蹴るなど、攻撃に欠かせないオプションとなりつつある。アンカーに入ったジオゴは前半に相手との接触で額を切りながら、終了までピッチに立ち続けた。2ボランチになった時や攻撃面で存在感を出せるかが課題だが、アジア勢のフィジカルを生かしたサッカーに対抗できる高さは貴重。本人も「パワープレーを自由にさせなかったのは良かった」と手応えをにじませた。

 新人蜂須賀は「1年目の初先発で、こんな経験はなかなかできない。3、4試合分の経験は積めた気がします」と初々しく振り返った。当たりの強さや裏への対応に苦しむ部分はあったものの、堂々のフル出場。「もっとうまくなって、次は自分のところでシャットアウトできるように頑張る」と前を向く。

 完全アウェーと化した会場の異様な雰囲気は選手に衝撃を与え、移動や現地のホテルでも苦労の連続。そんな過酷な状況で新しい力が輝きを放った。全員が大きな経験値を獲得し、チームの底上げを示した勝ち点1の意味は、決して小さくない。【亀山泰宏】