<J1:浦和2-1磐田>◇第5節◇6日◇埼玉

 レッズの優勝が見えた!?

 浦和が磐田に逆転勝ちした。磐田FW前田遼一(31)に今季初ゴールを許したが、後半32分にDF森脇良太(27)が同点ゴールを奪うと、ロスタイムにFW原口元気(21)が劇的な決勝点。勝ち点13で2位を守った。前田がシーズン初得点した相手はJ2に降格する「デスゴール」として有名だが、浦和にとっては「エンゼルゴール」だ。過去2度の洗礼を浴びたが、03年にナビスコ杯、05年にも天皇杯を優勝。“前田に取らせて試合は勝つ”という最高の結果で、はずみをつけた。

 強い浦和が戻ってきた。勝ちたい気持ちがゴールへ向かうボールを後押しした。ロスタイム4分のうち2分が過ぎる。原口の執念が、相手の連係ミスを誘った。バックパスのわずかなズレを見逃さずにさらうと、一気にゴール前へ。「緊張した」と言うGK川口との1対1で、冷静に肩口を抜くループシュート。転がるボールから視線を外し、一目散にゴール裏へ走った。

 「サポーターの気持ちと、チームの気持ちで入った」。後半だけで浴びせたシュートは15本。合計22本目が劇的な逆転ゴールとなった。「バスの中でメッシのゴールシーンを見てた。メッシって1対1になったら、よく浮かすじゃないですか。それが出たのかな。あまりしたことなくて、行き当たりばったり」と笑った。

 3日のACL全北現代戦。圧倒した前半で1点しか取れず、後半に3点を奪われて完敗した。試合後「負けたのは僕のせい」と責めた。敗因は分かっていた。ゴールに向かって左斜めの、得意な角度から先制した。だが逆サイドからのシュートは力なく枠をそれた。翌日VTRで確認し「外したらどうしようってなってた。自分の角度じゃないと慌てちゃう」と振り返った。神経質になっていた自分と見つめ合い、マイナスイメージを取り払った。「すぐにバカバカ取れるわけじゃない」と言いながら、頭の片隅に残ったメッシのループシュートを体現してみせた。前半終了時には、強い雨で水を含んだスパイクを履き替えた。「やっぱり軽いほうがいい」と冷静に対策を施した行動も、決勝点につながった。

 前半に興梠がPKを失敗し、前田にはデスゴールを決められ、雰囲気は重かった。だが今の浦和にはそれを跳ね返す力がある。ペトロビッチ監督は試合後の会見で「(前田に決められ)我々は危険な状態にある」と言いながらも「これで呪いは解けたでしょう」と余裕の笑みを浮かべた。

 浦和にとって前田のゴールはデスゴールではなく、エンゼルゴールだ。05年には天皇杯を優勝し、03年にはナビスコ杯も制した。となると今季はACLかリーグ優勝か、それとも両方か。まだ5試合を終えたばかりだが、弾みをつけるには大きな勝利となった。【高橋悟史】