<J1:清水6-4鳥栖>◇第29節◇19日◇アイスタ

 清水はクラブ史上最多タイとなる6得点を挙げ、鳥栖を振り切った。FW伊藤翔(25)が12戦ぶりのゴールを皮切りに、ハットトリックの活躍で攻撃をけん引した。

 ラスト1プレーで、この日の伊藤を象徴するかのようなゴールが生まれた。1点リードの後半43分。中盤でボールを受けると、ドリブルを開始。豪快な突破でDF2人を振り切り、最後は飛び出したGKをあざ笑うかのようなループシュートでネットを揺らした。

 「決まれば楽になると思った」。勝負を決定づける一撃に、ホームアイスタが揺れた。スタジアムに響く「翔コール」を浴びながら、直後の同44分にベンチに。10戦ぶりの起用に自身初のハットトリックで応え「チームが勝てたことが何よりです」。達成感に包まれながら歓喜の笛を聞いた。

 恒例の“儀式”が結果につながった。伊藤は、試合会場に向かうバスの中で必ず乱闘シーンを見る。理由を「自分を奮い立たせるため」と明かす。この日は、序盤から先手を取られる展開で「そういう時にこそFWが仕事をしないと」。苦しむチームに奮い立った。前半6分に左足、同22分にはCKから頭。2発の同点弾で劣勢ムードを一蹴。今季初のホーム4連勝を呼び込んだ。

 累積警告で出場停止のFWラドンチッチ(30)の穴を埋めるどころか、覚醒を印象付けた伊藤は「続けていくだけ」と、頼もしい言葉を並べた。次節、宿敵磐田の降格が決まる可能性のある「運命の静岡ダービー」に最高の弾みがついた。【前田和哉】