<J1:磐田0-1清水>◇第30節◇27日◇ヤマハ

 今季3度目の「静岡ダービー」は、壮絶な戦いの末に清水に軍配が上がった。同点で迎えた後半35分、FW大前元紀(23)が自身初の公式戦5戦連続ゴールとなるPKを決めて、決勝点。今夏ドイツから復帰後、公式戦11試合9得点と爆発するエースが、伝統の一戦でも結果を残した。

 清水に歓喜をもたらしたのは、大前だった。後半35分、FW村田のクロスが相手のハンドを誘い、PKを獲得した。巡ってきた最大の決定機に、エースとして迷わずボールをセットした。ゆっくりとした助走から豪快に右足を振り抜くと、サポーターの地鳴りのような歓声が響いた。大前は「決して自分たちのサッカーができたわけじゃない。チームとして勝てたことが良かった」。11年ぶりに「静岡ダービー」が開催されたヤマハスタジアムにオレンジの風が吹いた。

 試合後、大前は「結果がすべて」という言葉を何度も繰り返した。昨年、清水からドイツ・デュッセルドルフに移籍した。しかし、出場機会に恵まれず、7試合で無得点。わずか半年で終わった海外挑戦で、プロとして「結果」の重要さを痛いほど味わった。

 「清水のために点を取る。そのために帰国した」(大前)。復帰を決断すると、FWとしてゴールにこだわった。夏の加入から、これで公式戦12試合で9得点。大前は「今までのダービーで一番独特な雰囲気だった。その特別な試合で取れたこの1点は、自分にとって大きな価値がある」と笑みを浮かべた。伝統の一戦で奪った値千金の決勝点は、自身の成長を実感するものだった。

 リーグ戦も残り4試合。大前は「少しでも上位にいくために、全部勝つつもりでやる。それだけです」と誓った。スタジアムを後にする背中は、どこまでも頼もしかった。【前田和哉】