開幕へ向けた課題が、明確に見えてきた。J2札幌は熊本合宿第2クール3日目となる13日、熊本県民総合運動公園補助グラウンドで昨季10位の山形と練習試合を行い、0-2で今季実戦初黒星を喫した。センターバックで開幕スタメンを期待されているDFパウロン(24)が今季初めて練習試合に出場したが機能せず、ディフェンスラインの連係不足が浮き彫りとなった。

 まるで、見透かされているようだった。山形に0-1とリードされていた前半35分。ふわりと浮いた敵のボールは、クリアしようと跳び上がった192センチの札幌DFパウロンの頭上を、いとも簡単に越えていった。がらりと空いていたゴール前。センターバックの長身助っ人を左サイドに引きつけ、崩す。山形の術中にまんまとはまり、気づいた時には難なく追加点を奪われていた。財前監督は険しい表情で「センターバックのところに、まだ不安があって、それが試合にも出ていた」と、ぐっと口元を結んだ。

 パウロンにとっては、今季初実戦。2日前、右膝痛から半月ぶりに全体練習に復帰したばかりだった。昨季10月に故障で離脱して以降、公式戦は11月下旬の天皇杯1試合しか出場していない。試合勘が鈍っていたことは否めないが、パウロンは「45分、出られたのが良かった。長く試合から離れていたので、よく出来なかったところはある」。対人での強さは健在で、ひとまず周囲をほっとさせた。

 それよりも、首脳陣が問題視するのは、他のDF陣と連係が取れていないことにある。ベテランDF日高が、故障により長期離脱を余儀なくされ、守備陣を統率する重要なピースを欠いたまま開幕を迎えなければならない。元日本代表の名塚コーチは「(DFで)リードする人が出てこないとやられる」と危機感を抱く。この日、パウロンとセンターバックを組んだ新加入DF薗田に対しては「自分のプレーだけで終わっている」と、期待するからこそあえて苦言を呈し発奮を促した。

 敗戦の中から明確な課題が見えてきたが、財前監督は「これから連係を深めていけば、問題はないと思う」と、さほど深刻視していない。開幕スタメンと期待するパウロンが、実戦復帰したことが、まずはチームへの「良薬」。本番へ向けた布陣の見極めは、いよいよ佳境に入る。【中島宙恵】