<J1:浦和1-1鹿島>◇第17節◇27日◇埼玉

 W杯ブラジル大会の開幕戦で主審を務めた西村雄一氏(42)が、浦和-鹿島戦の主審を担当した。笛を吹くのはブラジル-クロアチア戦以来約6週間ぶり。24日の帰国会見では当時の微妙なPK判定について「あれは反則だった」と断言していたが、その強い意志を「J復帰戦」でも示した。

 会場がどよめいたのは後半24分の判定。同点の状況で浦和槙野が、ペナルティーエリアに進入してきた鹿島杉本をスライディングで止めた。観客からは、背中から落ちた杉本が足をすくわれたようにも見えたが、西村主審は即座に腕を横に振ってPKを取らなかった。試合後、槙野は「100点の守備」と自賛。杉本も「さすがでした」と正当に止められたことを証言した。その動きを30メートルほど後方から見ていた西村氏に迷いはなかった。

 一方で、背後からの接触プレーには徹底して笛を吹いた。前半40分に鹿島小笠原が浦和宇賀神を倒したシーン、後半5分に槙野が鹿島カイオをチェックした場面など判定基準は統一されていた。プレーを止めた後も必ず選手と話していた。昨年5月の対戦(J20周年記念試合)では日本協会が誤審を認めるなど荒れることも多いカードだったが、コミュニケーションを取りながらコントロールした。

 この対応に、浦和ペトロビッチ監督は「さすがW杯の厳しい状況を経験した人」。鹿島セレーゾ監督も「平常心を保つ作業が素晴らしかった」。口うるさい2人の賛辞が高い審判技術を物語っていた。【木下淳】