理想より、まず勝利-。清水の大榎克己新監督(49)は、今日2日のアウェー東京戦で初采配を振る。1日には静岡市内で約1時間半にわたる非公開の最終調整に臨んだ。7月30日の就任からわずか3日で迎える初陣に向け、システム変更などはせず、守備の確認作業に時間を割いてきた。現状を踏まえ、新指揮官は勝利優先に徹する考えを示した。新生エスパルスの船出を白星で飾り、チームを勢いに乗せる構えだ。

 正午すぎ。非公開で最終調整を終えた大榎監督が、報道陣の前に姿を現した。顔には笑みがある。7月30日の会見で「夢」と語ったエスパルスの監督に就任して3日目。初采配を控える素直な心境を語った。

 大榎監督

 正直不安もある。ただ、注目されることはこのクラブにとっても良いことだし、楽しみ。いまさらビビってもしょうがない。自分の中でやるって決めた以上、やるしかない。

 12位と低迷する中、ゴトビ前監督から引き継いだバトン。サポーターからの期待は大きい。その思いを認識しつつ、シーズン途中の就任という難しい現実も踏まえて至った結論がある。

 大榎監督

 理想のサッカーはある。ただ、今のチーム状況に加えてシーズン途中ということを考えれば、大きく変化させることは得策ではない。最初は、今までやってきたサッカーをちょっとアレンジしながらやっていくことが良いのかなと考えている。

 この3日間、大幅なシステム変更や選手の入れ替えはせず、確認作業に徹してきた。7月31日の紅白戦では、何度もプレーを止めてDFラインの修正を繰り返す監督の姿が目立った。

 大榎監督

 (東京には)エドゥーや武藤といった起点になる選手はいるし、しっかりと意思疎通したディフェンスをすることが重要。やはり、結果というものは選手にとって自信にもなるし、不安や疑心暗鬼にもなる。まずはこの試合に勝つことを考えていきたい。

 今は、あえて「大榎色」は封印する。勝利追求のタクトを振り、再建への1歩を踏み出す。【前田和哉】