<J1:広島0-0C大阪>◇第21節◇23日◇Eスタ

 広島が、力を振り絞って勝ち点1をつかんだ。20日未明に起きた広島市土砂災害から初の試合。甚大な被害が出た同じ広島市安佐南区にあるエディオンスタジアムで戦い抜いた。シュート数はC大阪の12本に対してわずか3本。それでも2万1102人の前で、リーグ2連覇中の王者が、なりふり構わずに体を張った。

 森保一監督(46)は「精神的には難しい状態で試合に臨んだ」。被害が出た安佐南区と安佐北区は多くの選手、スタッフが生活の拠点を置くお膝元だ。クラブ関係者は無事だったが、練習場に通う幹線道路沿いに悲惨な光景が続いている。主将のMF青山は、自宅がある地区でも犠牲者が出た。「あの時(20日)の恐怖は選手全員が感じていたし、今でもサッカーをやっていて本当にいいのかなという思いもある。でも自分たちにはサッカーしかできない」。20日当日の天皇杯3回戦水戸戦は救助活動を優先させるために27日に延期。再スタートのこの日、Jリーグの村井満チェアマンも会場を訪れた。

 試合前に黙とう。喪章をつけて「がんばろう広島」の文字が入ったTシャツを着た。ピッチ外では「たる募金」もスタートさせた。森保監督は「勇気や元気や希望…。最後まで粘り強く、タフに戦う姿を見せる。それが被災地で頑張っている人に向けてできること」と神妙に言った。

 負けなかったが、勝てなかった。地元出身のMF森崎浩は「心が痛いが、試合ができるだけでも幸せだと思う。勝つことで被災された方が明るくなれるようにゴールを目指したい」と誓った。【益田一弘】