<J1:清水1-4浦和>◇第23節◇13日◇エコパ

 「あのボレー」から3年半。浦和FW李忠成(28)が輝きを取り戻している。清水戦で2点目を決め今季5ゴール目を挙げた。「20回以上あの動きを繰り返した。1回が決まっただけ」と言ったように、DFラインの裏をしつこく狙い続けた。

 W杯ブラジル大会。結果的にサプライズ選出は大久保だったが、李にも可能性はあった。現地6月14日に行われたコートジボワール戦の2日前、ザッケローニ前監督から通訳を交えて電話があった。「今まで本当にありがとう」。ねぎらいの言葉だった。ザックジャパンを波に乗せたのは、間違いなく11年1月29日アジア杯決勝で優勝に導いたあの美しいボレーシュートだ。李は「あれがあったから、1年半は代表に定着できた。海外に行けたのもあのおかげ。海外で結果を出せず、その後代表に選ばれなかったのは自分のせい」。

 前指揮官からのねぎらいの言葉に、素直に代表チームを応援出来る気持ち、うれしさ、悔しさが同居した。同時にそれをぶつけるのは浦和しかないと踏ん切りもついた。

 今季のリーグ戦23試合が終了して先発は6試合。だがここまでの公式戦33試合すべてでピッチに立っている。浦和ではただ1人だ。ペトロビッチ監督からは加入直後から「焦らずにやればいい」と言われている。全試合出場が信頼の証しだ。

 李は清水戦後「内容よりも自分が決めたかった。自分が取ればチームの結果につながる。残り11試合。誰かが爆発しなければ。それは自分」。後半5分には前線でスライディングしボールを奪った。エゴが交じる言葉と裏腹にプレーはフォアザチームそのものだった。

 リーグ戦も残り3分の1。8年ぶりのリーグVへ、李の爆発力が必要になる時がきっと来る。【高橋悟史】

 ◆11年アジア杯決勝点VTR

 1月29日、オーストラリアとの決勝戦。0-0で迎えた延長前半9分から李忠成は途中出場。同後半4分にDF長友からのクロスをゴール前でフリーになり、左足でダイレクトボレーシュート。代表初ゴールが貴重な決勝点となり日本は4度目の優勝となった。