<ナビスコ杯:G大阪3-2広島>◇決勝◇8日◇埼玉

 G大阪の長谷川健太監督(49)がリーグ、天皇杯を含めた3冠へ、1つ目のタイトルを手に入れた。昨季J2で優勝しているが、就任2年目のG大阪で、実質的な初Vだった。

 心に刻んでいる言葉がある。「死中に生あり、生中に生なし」-。「ピンチはチャンスということで、私の座右の銘です」。戦国武将・上杉謙信の言葉は、前半35分までに2点のリードを許した展開そのもの。後半、布陣を3ボランチからいつもの2ボランチにチェンジ。攻撃的タクトで結果をつかみに出て勝った。

 昨年、J2で戦うことになった強豪の指揮を引き受けた。「このメンバーで勝てなきゃ、手腕がないということ」。2部で戦いながら選手との信頼関係を築き、同時に若手も育成した。

 その答えが昇格1年目でつかんだ優勝だ。遠藤、今野のベテランと宇佐美ら若手の力がかみ合ったチームでのタイトル。清水監督時代はナビスコ杯1度、天皇杯で2度、決勝で屈した。試合後に遠藤からそっとカップを渡されると「これは掲げたことがある」とやんわり断った。選手だった96年に清水で優勝経験を持つ。ただ本音は違う。「帰ってゆっくり眺めて、こっそり掲げたい」と笑わせた。

 今季はまだリーグと天皇杯でも頂点に立つチャンスを残す。来季続投も確実で「新しい時代の始まりといってもいいんじゃないか」と口にした。単身赴任中で練習後の晩ご飯はコンビニ弁当が多い。趣味もなくサッカー漬けの指揮官が、指導者として初めて栄冠を勝ち取った。

 ◆ナビスコ杯

 国内3大タイトルの1つ。第1回は92年で、95年だけ開催されず。予選リーグを経て決勝トーナメントに進む。優勝1億円、準優勝5000万円。昨年まで東京・国立競技場で開催されてきたが、東京五輪による建て替えで今回は埼玉に移った。

 ▼史上初の2点差逆転V

 G大阪が0-2のビハインドから3点を返して逆転勝ち。ナビスコ杯の決勝で2点差を逆転しての優勝は22回目の大会で初めて。96年大会ではV川崎(現東京V)が清水戦で0-2から追い付いたことはあったが、結局同点止まりだった。

 ▼昇格即タイトル

 今季J2から昇格したG大阪が優勝を決めた。前年J2クラブのナビスコ杯制覇は初。今季のG大阪はリーグ戦と天皇杯でも優勝の可能性を残す。昇格初年度のJ1リーグ戦制覇は11年の柏という前例があるが、一挙に3冠となれば、世界的にみても前代未聞。Jリーグでも3冠は1度も2部に降格したことのない鹿島が00年に1度だけ達成。