山形DF高木利弥(22)が、2人の代表戦士を超える活躍を誓ってプロ初のキャンプに取り組んでいる。父は元日本代表FWで、現在はJ2長崎を率いる高木琢也監督(47)。今日7日の東京との練習試合では、中学の同級生にあたる日本代表FW武藤との対決が実現する可能性がある。積極的な攻撃参加が武器の新人左サイドバックが、初実戦で開幕スタメン奪取を目指してアピールする。

 身近な2人の“ライバル”と同じ世界に飛び込んだ高木が、厳しい練習に食らいついている。「ボールを使っても体力強化のメニューなのでキツいけど、若いので負けていられない」。攻守の切り替えの速さと運動量を求められるミニゲームでは、石崎監督や先輩選手の指示を受けながら多くを吸収している。

 山形の一員として迎える7日の初実戦が、因縁対決となった。中学時代は東京の下部組織に所属。同級生の武藤とは攻撃的なポジションを争うライバルだった。当時から能力の高さを見せてレギュラーで活躍した武藤に対して「僕は身長も高くなくて細かったので、ずっと控えだった」。結局ユース昇格はかなわず、別々の道を歩んだ。いまや武藤は日本代表。試合は見ると言うが「頑張ってほしいけど、ちょっと悔しい気持ちはある。J1の舞台で早く対戦したい」と直接対決を心待ちにしている。

 もう「大砲Jr」とは呼ばせない。サッカーを始めた頃から「高木琢也の長男」として見られ続けてきた。父のアドバイスでフィジカル面の強化や日々の準備の大切さを学んだが「親の七光でプロに入ったという目で見られたくない」と話す。東京ユースに昇格できず進学した帝京高では1年から主力に抜てき。神奈川大では「最初は嫌だった」というサイドバック転向で素質が開花した。挫折を味わいながら階段を上ってきた男は「高木利弥として、これから活躍できるように頑張る」と意気込む。

 目標は今シーズン中のJ1デビューだ。もちろん開幕スタメンも狙うが「もっと切り替えの速さを身につけて、体も75キロくらいまで大きくしたい」と日々の練習に励む。追い続けていた父と同級生の背中を超える日まで、高木は努力を続けていく。【鹿野雄太】<高木利弥(たかぎ・としや)アラカルト>

 ◆経歴

 1992年(平4)11月25日、広島県生まれ。98年に父の移籍に伴い東京・世田谷区に転居。小1から和光FCでサッカーを始め、中学では東京U-15深川に所属。帝京高では1、2年時に全国選手権出場。神奈川大1年時にMFからサイドバックに転向。昨年7月に山形の強化指定に登録。今季から加入。

 ◆プレースタイル

 「ガンガン前に行く」。積極的な攻撃参加でペナルティーエリア内まで進入する。

 ◆性格

 信念は曲げない。「最近、母親に『お父さんに似て頑固になってきた』と言われる」と笑う。

 ◆験担ぎ

 ピッチに入るときは左足から。試合当日の朝食は納豆ごはん。

 ◆好きな食べ物

 すし。サバなど渋いネタを好むが「魚介類がおいしい館山で食べられないのが残念」。

 ◆身長、体重、血液型、家族構成

 178センチ、72キロ、O型、両親と妹。