難民受け入れに反対するドイツの右派政党幹部が、ドイツ代表のジェローム・ボアテングについて差別的とも取れる発言をして物議を醸している。同選手は父親がアフリカ・ガーナ出身。

 「ドイツのための選択肢(AFD)」のガウラント副代表が5月29日付のフランクフルター・アルゲマイネ日曜版のインタビューでボアテングを「人々は良い選手と思っているが、隣人にはなってほしくないと考えている」と語った。

 ドイツ系と移民系の選手が一致団結して勝利を目指す代表チームは、トルコ系移民などを多く抱えるドイツ社会の目指すべき理想像とされている。それだけにガウラント氏の発言には非難が続出。ドイツ政府のザイベルト報道官は30日の記者会見で「下劣で悲しい発言だ」と切り捨てた。

 AFDのペトリ代表も大衆紙ビルトに対し「ボアテング選手に謝罪したい」と語り、事態収拾に躍起になっている。

 ボアテングはベルリン生まれで、2014年のW杯の優勝メンバー。6月にフランスで開幕する欧州選手権でも守備の要としての活躍が期待されている。

 5月29日に南部アウクスブルクで行われたドイツ代表の親善試合では、ファンが観客席で「ジェローム、隣に引っ越してきて」などとボアテングを支持するプラカードを掲げた。同選手はドイツのメディアに「スタジアムで(自分に)好意的なプラカードを見た」と安堵(あんど)した様子で話した。

 一方、ガウラント氏はメディアに「近所によそ者が来ることを多くの人が快く思っていない」ことを言いたかっただけだと語り、「侮辱するつもりなどなかった」と主張。フランクフルター・アルゲマイネ紙に対しては法的手段も辞さない構えを見せている。