【バルセロナ(スペイン)15日=塩畑大輔、山本孔一通信員】エスパニョールMF中村俊輔(31)が、チームメートの全面支援を取り付けた。入団会見などでみせた謙虚な姿勢、過熱気味の周囲の期待を見て、新しい仲間たちは「ナカムラが活躍しやすい環境を」という考えでまとまり、練習でも中村に気を配るシーンがみられた。チームに溶け込む手ごたえを得た中村は16日、バルセロナ郊外に移動。ペララダ合宿に入る。

 中村の周囲には常に、チームメートの笑顔があふれていた。14日夕(日本時間15日未明)の、チーム合流後2度目の全体練習。中村はウオームアップの段階から、司令塔のMFデラペーニャの“すっぽんマーク”を受けた。隣でストレッチしながら会話し、ボールを使ったトレーニングでも、ペアを組んだ。エース格2人の打ち解けた様子に、ポチェッティーノ監督ら首脳陣も、思わず目を細めた。

 その後も中村は、チームの象徴FWタムードやFWルイス・ガルシアから、盛んに声をかけられた。当初は緊張した面持ちだった中村も、この日の練習終了時には、すっかりリラックスした様子になった。

 周囲が中村を気遣うには理由がある。主将のDFハルケは「空港や会見の様子を見たけど、びっくりした。中村は重圧を感じていると思う」と心配した。10日に500人のサポーターに取り囲まれたバルセロナ空港到着、そして13日の1万人を集めた入団会見の様子をみた同僚たちは、焼きもちを焼くより、むしろ気の毒だと感じていた。

 ハルケは「彼が力を出せるように自分たちはサポートしていく」と宣言。他の選手たちも同調し、早くも「中村サポート態勢」が完成した。かつてラツィオに在籍し、イタリア語が分かるデラペーニャが「ガイド役」を買って出たのも、スペイン語が不得意な中村への配慮。「彼との関係はもう完ぺきだよ」と笑顔でうなずいた。

 右MFのポジションを争う、同じ新入団のピジュまでもが「プレシーズンから一緒に自分たちの力を見せていきたい」と共闘を誓った。エスパニョールは昨季、2部落ちの危機にひんしながらも、終盤を8勝1分け1敗で乗り切り、残留を勝ち取った。苦境を乗り切ったチームのきずなは強い。中村もその輪の中に、スムーズに溶け込んだ。

 [2009年7月16日8時24分

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