<スペインリーグ:ビルバオ1-0エスパニョール>◇30日◇ビルバオ

 【塩畑大輔、山本孔一通信員】エスパニョールMF中村俊輔(31)が、新天地スペインでデビューを果たした。アウェーのビルバオ戦に右MFで先発フル出場。前半12分にはゴール正面約21メートルという絶好の位置から直接FKで狙ったが、シュートはゴール枠を越えた。それでも柔らかなボールタッチで好機を演出。試合は0-1で敗れたが、今後へ大きな手応えをつかんだ。

 中村にはうれしさと悔しさが入り交じるデビュー戦だった。前半12分、ゴール正面約21メートルと絶好の位置で直接FKの好機をつかんだ。警笛のように鳴り響く敵地のブーイング。敵サポーターから力を認められている証拠だった。直接FKのために中村がボールを置いた瞬間、サンマメス・スタジアムは、地鳴りのような罵声(ばせい)に包まれた。主審がFK位置からの距離不足とみて、壁を下げさせる。ブーイングは悲鳴のようなトーンに変わった。

 「距離が遠すぎるぞ!」。観衆は総立ちだ。大きく3歩下がり、ゴールを狙った。しかし、ゴールバーをあえなく越えた。約4万人収容の会場から、安どのため息どころか、大きな歓声が会場を包んだ。中村は「しまった」と少し悔しげな表情だ。サポーターの圧力、芝の感触、ボールの感覚。微妙に変化した環境が少なからず影響した。

 あこがれ続けてきたスペインリーグ。念願のピッチは、すんなり中村を受け入れた。同4分には名刺代わりのスルーパスを、FWタムードに通してチャンスをつくった。同14分には右サイド深くでDF2人をドリブルでかわし、敵陣中央を左足クロスで脅かした。屈強なバスク人が中心のビルバオ守備陣のタックルに、軽く吹き飛ばされる場面もあったが、プレーの躍動感は変わらなかった。

 夢の舞台へ向け、着々と準備を進めてきた成果だ。8月中旬には日本から個人トレーナーを呼び寄せ、自宅でもマッサージやストレッチができるようにした。オーバーワークを避けるため「デザートのようなもの」と話す大好きな居残りFK練習も我慢した。慎重な調整で、ここ数年の悩みだった右股(こ)関節痛もかなり回復。試合前には「予定通りの調整ができた。というよりも、予定通りになるようにしたんだけどね」と自信をみせた。

 後半はチームが攻撃の起点をつくれず、中村のタッチ数自体も減った。10分にラフプレーで警告も受けた。だが、司令塔はめげるどころか、さまざまな「引き出し」で攻撃の組み立てを試みた。MFルイス・ガルシアと入れ替わって左サイドでプレー。中盤中央に下がって球を受け、サイドチェンジのロングパスも出した。26分には立て続けに正確な右クロスを上げ、相手守備陣を混乱させた。

 中村は試合直前「相手は強いし、うまくいかないこともある。それを乗り越えていくことで大きく成長できる。それを楽しむためにここに来た」。黒星スタートとなったが、苦境をバネに成長してきた中村が、新たな挑戦に歩み出した。

 [2009年8月31日8時23分

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