<ブンデスリーガ:ホッフェンハイム3-1ウォルフスブルク>◇17日◇ジンスハイム

 長谷部がGKになった!

 ブンデスリーガ(ドイツ)のウォルフスブルクに所属する日本代表MF長谷部誠(27)が、リーグ戦で即席GKを務めた。17日、アウェーのホッフェンハイム戦に右サイドバックで先発出場したが、1-2で迎えた後半35分、GKヒッツがレッドカードで一発退場。すでに交代3枠を使い切っていたため、長谷部が急きょGK用の白いユニホーム姿でゴール前に立った。冷静なセーブやキックを見せたが、相手選手と1対1の場面で追加点を奪われて敗れた。

 ぶかぶかのユニホームを着た長谷部が、ゴール前で仁王立ちになった。フィールドプレーヤーの緑のユニホームの上からGK用の白いユニホームを着用し、白いグローブをつけた。その顔には、強い決意が刻まれていた。

 まさかの緊急交代だった。3人の交代枠をすべて使い切った後の後半35分、GKヒッツが審判への異議でレッドカードを受けて一発退場。長谷部らチームメートは審判の元に詰め寄り抗議したが、判定は覆らなかった。ヒッツもあきらめてユニホームとグローブをチームメートに託し、ピッチを去った。

 監督はDFルスに代役を指示したが、同選手は拒否。選手たちで相談した後、芝の上からユニホームを拾い上げたのは長谷部だった。苦笑を浮かべながら、GKのユニホームに袖を通した。グローブもはめたが、手首の面ファスナーを止める方法すら分からず、装着に時間を費やしたほど。しかし、顔を上げると表情は引き締まっていた。

 直後の同37分には、ルーズボール対処のためペナルティーエリアを飛び出し、右足ロングキックで相手の好機をつぶした。さらに先制点を決められているホッフェンハイムのFWバベルがドリブルで飛び出してきたが、大きくなったトラップを見逃さずに落ち着いてキャッチ。GK長谷部は上々の滑り出しとなった。

 しかし、同40分、相手MFフィルミノがドリブルで中央を突破し、1対1となりゴールに迫った。長谷部はコースを読み左へ流れたが、シュートは右へ。逆をつかれ、ぽっかり空いたゴールに球が吸い込まれ3点目を奪われた。それでも長谷部は拍手をして沈むチームメートを鼓舞。強いメンタルでプレーを続けた。

 この日は右サイドバックで先発。後半開始からはボランチとして、縦パスを前線に送るなどカウンター攻撃の起点にもなっていた。ゴール前FKのチャンスでは、こぼれ球に右足を合わせてミドルシュートを放つなど、攻撃にも積極的に参加していた。

 主将を務める日本代表ではボランチが定位置だが、6日のW杯アジア3次予選ウズベキスタン戦ではトップ下もこなした。ブンデスリーガではサイドバックもこなし、幅広いポジションに対応してきたが、さすがに突然のGKは荷が重かった。