なでしこジャパンのINAC神戸FW大野忍(28)が、フランス1部リーグに所属する欧州王者リヨンに移籍することが26日、分かった。関係者によると、既に契約条件なども含めて合意に達しているという。来月上旬にフランスへ渡り、メディカルチェック後に正式契約する。

 昨夏のW杯以降、大野はFWだけではなく中盤としても活躍し、能力の高さを世界に示した。ロンドン五輪後には「(決勝の)米国戦では決定力の差が出た。もっと世界でやりたい。海外でプレーすることで、さらに成長できることも多い」と欧州移籍を決意していた。日テレ時代の08年秋、澤や宮間とともに米女子リーグにドラフト指名された経験もあるが、日本への愛着などを理由に断念。今回が初の海外移籍となる。

 大野には夢がある。それは女子サッカーの世界的な普及だ。今回もドイツ、フランスなど世界の強豪国だけではなく、欧州の発展途上国でのプレーも視野に入れたほど。「女子サッカー人口が増えていく手助けがしたい」と周囲に話しており、フランスでも子供たちへのサッカー教室などプレー以外の貢献も希望する。

 日本人FW大滝も所属するリヨンは、女子の欧州CLを連覇し、先月に日本で開催された国際女子クラブ選手権では、INAC神戸を破り優勝した。「女ジダン」の異名をとるMFネシブら、五輪の準決勝で日本を苦しめたフランス代表12人が在籍するほか、スウェーデン代表FWシェリン、スイス代表MFディッケンマンも名を連ねる。男子に例えるなら、バルセロナやマンチェスターUに匹敵するスター軍団だ。

 15年W杯カナダ大会に向けた大きな決断。同僚の澤は「ブッチ(岩渕真奈)もそうだし、海外を常に体感できることはプラスになる」とエールを送っている。

 ◆大野忍(おおの・しのぶ)1984年(昭59)1月23日、神奈川県座間市生まれ。読売西友メニーナから、99年にNTVベレーザ(現日テレ)昇格。11年1月にINAC神戸移籍。リーグ通算163得点は歴代1位。03年1月の米国戦で日本代表デビュー。代表通算112試合出場38得点。154センチ、50キロ。

 ◆日本女子選手の海外プレー

 世界最高レベルのドイツリーグには、ポツダムFW大儀見、フランクフルトDF熊谷、デュイスブルクFW安藤が在籍。1月には日テレFW岩渕が2部ホッフェンハイムに移籍する。フランスではFW大滝がリヨン、MF宇津木がモンペリエに所属。かつてはMF澤、宮間、丸山らが米プロリーグに、岡山湯郷MF山口はウメオなどスウェーデンリーグに在籍した。