今後こそタッグを! 名古屋ウィメンズマラソンでリオデジャネイロ五輪代表を確実にした田中智美(28=第一生命)を指導する山下佐知子監督(51)が、代表3人の戦術的結束を訴える考えを示した。教え子の尾崎好美さんが出場した前回のロンドン五輪でも同様の提案をしたが、本番では機能せずに日本勢は惨敗した。同じ轍(てつ)は踏ませない。田中はレースから一夜明けた14日、名古屋市内で取材に応じた。

 「おなかすいたなあ」。リオ切符を手にした田中は、いつもと同じ朝を迎えていた。日本人最高位を巡る小原との1秒差のデッドヒートは鮮烈な印象を残したが、激走した本人はいたって平静に「脚の痛みもないですね。良い走りができたのかな」。朝7時から20分ほどの散歩を終えてホテルへ戻ると「いつもレースの後は寝られないんです」とし、徹夜で300件を超えたメールやLINEの返信作業をしていたという。

 正式決定は17日の理事会後のため、リオ五輪への計画は「決まってからですね」としたが、一方で山下監督は早くもプランを練っていた。レース直後の前夜、「やはり日本はチームとして戦術作りをうまくしないと」と語気を強めた。女子3選手で海外の強豪に対抗するための協力態勢の構築を訴えた。

 失敗経験がある。ロンドン五輪でも同じ提案をした。一緒に走る他2選手の監督と相談し、最初から2時間24~25分の記録を想定したペースで、淡々とレースを作る作戦を試みた。しかし、体調不良や意識の徹底が足りず、最高位は木崎の16位と低迷した。

 リオではロンドン以上に結束が求められそうだ。昨年の世界選手権で代表に内定した伊藤は、海岸沿いも走る10キロの周回コースを視察し、「風対策も必要かも」とにらんだ。風よけのローテーションでも、日本勢の協力が成績の分かれ目になるかもしれない。

 田中も万全に備える。前日のレースで腰につけた「勝守」をリオにも持参する。元帥海軍大将・東郷平八郎命を祭る東郷神社(東京・渋谷区)のお守りで、勝負運の御利益を求めてサッカーの本田圭佑や体操の内村航平らも訪れる。「毎年高校の恩師が送ってくれる」そうで、「参拝したことないのでリオの前に行かないと」。04年アテネ大会以来のメダル獲得へ、師弟ともにできることを追求する。【阿部健吾】