4連覇がかかる羽生結弦(21=ANA)が、102・63点で首位発進した。冒頭の4回転サルコーで転倒したにもかかわらず、自身5度目の100点超えをマークし、強さを見せつけた。今大会は来年3月の世界選手権(ボストン)の代表選考も兼ねており、男子は2枠。今日26日にフリーが行われ、優勝者は出場が確定する。

 滑り終えた羽生は、苦笑いしながら舌を出した。冒頭の4回転サルコー。跳んだ時に頭が後ろにやや倒れ、回りきったが尻もちをついた。「悔しいです」。歴代最高得点を出した最近2戦はSP、フリーともノーミス。スケートカナダのフリー以来3戦ぶりの転倒に、納得いかない表情でリンクを出た。

 不安は的中した。昼間の練習では、曲に合わせた時には成功したが、その後になかなか決まらない。上着を脱いで半袖になるまで、何度も跳んで感覚を確認した。それから約8時間。フォームの修正に取り組んだが失敗した。また「環境要因です」とも話した。ここ2戦は海外選手が交じる国際大会だったが「日本語が通じて、どうしてもリラックスしすぎてしまう」と、体と心のバランスがかみ合わない部分もあった。

 ISU(国際スケート連盟)の公認記録には残らない大会。100点超えした国際大会の点数とは単純に比較できないが、ジャンプでミスしてもSPで100点を超えるのは初めて。「102点の点数でも、みなさん『あ~』ってなるんですよね。でも考えてみたら、3年前はノーミスしないと出ない点数だった」。

 転倒の後の4回転-3回転の連続ジャンプは、最高の3点の出来栄え点を稼ぐ完璧な出来。ステップ、スピンもすべて最高レベルの「4」がついた。「最初のミスはかなり大きなもの。明らかなミスからここまで(点数を)出せるのは大きい」。基礎点が高い、高難度のプログラムに取り組んでいるため、ジャンプ以外の要素でも点数を稼げる。ミスしたからこそ、今の強さがかえって表れた。

 昨年は11月の中国杯の練習で衝突するアクシデントに見舞われ、全日本後は「尿膜管遺残症」の手術を受けた。ベッドで過ごすつらい年末とは一転、今年はNHK紅白歌合戦の審査員として大みそかまでスポットライトを浴びる。今日26日のフリーが今年最後の戦い。「心の準備は明日に向けて整ってます」。15年を納得のいく演技で締めくくる。【高場泉穂】

 ◆世界選手権代表選考 日本の出場枠は男子が2、女子は3で、全日本選手権の優勝者は自動的に代表決定。男子の2人目は全日本の2、3位、GPファイナル出場者(羽生、宇野、村上)などから選ぶ。女子の2人目は全日本の2、3位、GPファイナルの日本勢上位2人(宮原、浅田)から選び、3人目は全日本の4~6位なども含めた中から総合的に判断する。ペアとアイスダンスは国際的な競争力を考慮して各1組を決定する。