世界6位の錦織圭(26=日清食品)が、日本男子のシングルスで戦後初めて“聖地”センターコートで勝った。同547位のベネトー(フランス)を4-6、6-4、6-4、6-2の逆転で退けた。この1勝で4大大会のすべてのセンターコートで勝利。

 4大大会のセンターコートでプレーすることは選手の夢だ。中でもウィンブルドンのセンターは特別で“聖地”とも呼ばれる。会場のクラブが現在地に移転した1922年に完成。94年の伝統と格式を誇り、1年間で大会期間の2週間しか使われない。

 ウィンブルドンのセンターでプレーできるのは一種のステータス。観客が呼べる興行的な面もあるが“聖地”にふさわしい選手と大会から認められたことになる。錦織は10年の1回戦が初めて。当時は世界189位で、対戦相手は1位ナダルだった。戦後、日本選手は女子9人、男子3人が“聖地”に立ち、その大半がいわば他力で経験した。

 今回の錦織は自力で引き寄せたのだから名誉なことだ。実は昨年の2回戦もセンターで予定されていたが、試合当日、左ふくらはぎのケガで戦う前に棄権。「センターで、もし途中棄権をする可能性があるなら、初めからプレーしない方がいい」と打ち明けている。それだけ“聖地”には重みがあるということだ。

 ちなみに錦織は過去に勝った瞬間に会場のセンターに立っていた経験がある。12年ロンドン五輪の3回戦。日没のため、他のコートから移動して照明の下で最後の1ゲームだけプレー。フェレール(スペイン)を破り、日本人88年ぶりの8強進出を決めた。【吉松忠弘】