賭博問題で処分を受けた西本拳太(22=中大)が汚名返上の初優勝を決めた。坂井一将(26=日本ユニシス)に2-1と逆転勝利。4月に違法カジノ店に行ったとして日本A代表から外され、大学からは1カ月の謹慎処分を受けた。謹慎期間はテニスの元世界ランク1位ジョコビッチらの本を熟読。世界一流の心技体を学び、初の日本一につなげた。

 絶体絶命の危機を味わえることが、幸せだった。西本は第1ゲームを取られ、第2ゲームも11-14と厳しい状況に追い込まれても、我を失わない。冷静に間を取り、タオルで汗を拭く。「気持ちを整理した」後は持ち前の粘りが復活。終盤の4連続得点で22-20と逆転でゲームを奪う。最終ゲームは21-8と圧倒し、初の日本一の座をつかんだ。

 4月に違法カジノ店に行ったと日本協会に申告。日本A代表から外され、大学からは1カ月の謹慎処分を下された。三重の実家に帰ると、家族に迷惑を掛けたことを謝罪。プレーで名誉挽回することを誓ったが、今まで当たり前だった練習すらできない日々。「自らまいた種とはいえ、きつかった」と振り返る。

 人生最大の挫折だったが、腐らない。テニスの錦織、ジョコビッチ、メジャーリーガーのイチローらの本を熟読。食事にこだわり、ストイックに競技に取り組む姿勢を学んだ。「今まで好きな物を食べてきた。甘い物を禁止したり、食材も選ぶようになった」。大好きなバドミントンを禁じられたからこそ、より競技中心の生活に改善できた。

 賭博問題で日本協会から無期限の試合出場停止処分中の桃田賢斗とは同級生。全国中学、高校総体といつも桃田の壁にぶつかってきた。昨年の全日本総合も準決勝で敗北。桃田不在の今大会優勝はノルマでもあった。「練習ができるという当たり前のことに、今は感謝できる」。学生としては16年ぶりの優勝で、日本A代表復帰も確定。不祥事を無駄にはしなかった。【田口潤】

 ◆西本拳太(にしもと・けんた)1994年(平6)8月30日、三重・伊勢市生まれ。8歳からバドミントンを始める。伊勢・小俣中3年時の全国中学大会男子シングルス3位。埼玉栄高3年時の高校総体男子シングルス3位。中大進学後は1~3年のインカレ優勝。来春からはトナミ運輸に就職。180センチ、71キロ。