500メートルは7レース全勝中だった年明け。スケート靴の刃を、従来のオランダのメイプル社のものから、同じオランダのバイキング社の新作「サファイア」に替えた。シーズン中の変更にちゅうちょする選手が多い中、果敢に挑む。すると何度滑っても1周400メートルのラップが0秒1、2速かった。すぐに実戦投入を決断。タイムは昨年暮れまでの37秒台後半から37秒台前半、今大会の36秒台と一気に短縮させた。絶好調のシーズン中も改良を求める姿勢は、躍進の大きな要因だった。

 すっかり乗り慣れた表彰台。喜びは控えめだった。「世界記録は出していない。頂点はまだ先。興奮するには早い。五輪で爆発させたい」。5月には31歳になるが、まだまだ成長の余地を実感する。最後に故郷長野・茅野市名産のリンゴの木に自らを例えた。「ようやく実がなり始めたところ。熟すにはまだ時間がかかる」。食べ頃は1年後の平昌五輪だ。

 ◆小平奈緒(こだいら・なお)1986年(昭61)5月26日、長野県茅野市生まれ。3歳からスケートを始める。伊那西高から信州大。06年にW杯初参戦。同大卒業後、09年から相沢病院。10年バンクーバー五輪は女子団体追い抜きで銀メダル、1000、1500メートル5位。14年ソチ五輪は500メートル5位。15年W杯女子500メートル総合優勝。165センチ、61キロ。