リオデジャネイロ五輪男子400メートル個人メドレー銅メダルの瀬戸大也(22=ANA)が、4分10秒44で初優勝を飾った。同金メダルの萩野公介(22=ブリヂストン)とデッドヒートを展開して、100分の1秒差で勝った。これで7月の世界選手権ハンガリー大会代表に内定。同選手権3連覇に向けて、弾みをつけた。昨年9月の右肘手術から国内復帰レースとなった萩野は、同種目での6連覇を逃した。

 「名勝負数え歌」にふさわしい接戦だった。ラスト50メートルのターン。瀬戸は「ここで勝てなきゃ、世界選手権3連覇もない」と、0秒04先を行く萩野を追った。最後の10メートルはともに意地を張り合うような息継ぎなし。0秒01差で勝った。ライバルの連覇を「5」で止めて初の日本王者。「公介と0秒01差の決着は記憶にない。得意種目で、ずっと優勝したかった」。

 スタンドに母方の祖母で車いすの久子さん(85)がいた。両親が埼玉・毛呂山町から車で名古屋まで来ての観戦だった。「おばあちゃんが久しぶりに見にきてくれた。年末にちょっと体調が悪くなったけど、これで喜んでくれれば。0秒01差の力はおばあちゃんのため。元気になって、東京五輪も見てほしい」と話した。

 同世代から刺激を受けている。94年生まれは瀬戸、萩野、プロ野球大谷ら各界の才能が集中。柔道のベイカーが「ワンダフル世代」と命名した日本のスポーツ界を担う世代だ。昨オフには大谷らと食事会を開催。その時に、大谷の習慣に衝撃を受けた。「サプリメントを持参していて、食事が終わるとすぐにお店で摂取していた。『すげえー、オレは絶対、家でとる』って思いましたもん。公介(萩野)も翔平(大谷)もそうだけど、競技に対する姿勢が一流。まだ自分は二流と思う」と反省。4月にANAと4年契約をして「社会人で水泳=プロと思っている。自覚を持っていく」と決意を新たにしていた。

 直接対決で萩野に勝ったのは15年5月のジャパンオープン以来約2年ぶり。「この勝ちが自信になる」と力を込めた。【益田一弘】

 ◆競泳の世界選手権代表選考 個人の五輪種目は、日本選手権の決勝で日本水連が新たに定めた世界ランク24位前後相当の「標準記録」を突破して2位以内なら代表決定。ただしリオ五輪のメダリストで日本勢最上位が当該種目に出場すれば代表とするため、萩野の男子200メートル、400メートル個人メドレー、坂井(早大)の同200メートルバタフライは残り1枠となる。個人の非五輪種目とリレー種目は別の基準で選考する。