世界王者の羽生結弦(22=ANA)がSPで83・51点にとどまり、7位と出遅れた。ジャンプ3要素のうち2つで失敗。今日21日のフリーは13年世界選手権以来4年ぶりに最終組より1つ前のグループでの滑走となった。

 羽生は滑り終えると「ごめんなさい」と、天を仰いだ。取材エリアでも大量の汗を額にかきながら「頭が全然回らない」。世界王者として帰ってきた舞台での失敗。強烈な悔しさがこみ上げていた。

 ジャンプは好調で、自信を持って迎えたはずだった。「予想外というか」。最初の4回転ループを跳び損じ、1回転となった瞬間「かなり得点がなくなっていると感じた」。取り戻そうと次のジャンプに集中したが、4回転サルコーで手をつき、連続技に出来ずさらに点を失った。GPスケートカナダの79・65点に次ぐ今季ワースト2位の記録。さらに、フリーで最終グループに入れないのは、ソチ五輪の枠取りをかけ9位発進した13年世界選手権以来だった。

 空回りした理由もあった。今日21日は、SP曲「レッツ・ゴー・クレイジー」を作ったプリンスさんが亡くなってからちょうど1年。最高の演技を、彼にささげるつもりだった。「語る資格はない。こんなんじゃ、顔に泥を塗るようなもの」。1年間1度もSPを完璧に滑りこなすことはできなかった。

 演技が終了してから30分も立たずに荷物をまとめて会場の外へ出た。待ち受ける多くのファンに「明日頑張ってね~」と声をかけられ、「頑張ります」と礼をして、車に乗り込んだ。笑顔の裏にある怒りは「明日しっかり爆発させたい」。今季7戦目、今季最後の演技に思いをぶつける。【高場泉穂】