<テニス:全仏オープン>◇5月30日◇パリ・ローランギャロス◇男子シングルス1回戦

 世界9位の錦織圭(27=日清食品)が苦戦しながらも初戦を突破した。右肩の手術で15年全米以来の4大大会出場となったコッキナキス(オーストラリア)に4-6、6-1、6-4、6-4の逆転勝ち。亜大教授でテニス部総監督の堀内昌一氏は、依然として錦織のテニスの質は高い水準と分析した。

 春先のシリーズで優勝がなく、手首の不調もあって錦織のランキングは9位まで落ちた。自信をなくした姿を心配する声もあるが、この試合で見せたテニスの質はさらに先へ進もうとしている。

 初戦は将来有望のコッキナキス。196センチのビッグサーバーであり、強烈なフォアハンドを持つ。初対戦の錦織は第1セットを失うが、苦戦した試合内容とは裏腹に、初顔の情報を積み重ねていく。その1つが、フォアハンドを打つ際の微妙なクセだった。

 コッキナキスは逆クロス(回り込んで右へ打つ)の時、少し体が左に流れる。そのため、ボールは右へ切れる。錦織は少しずつ打球の傾向をつかみ、中盤以降は体の正面にボールを集めた。正面のボールを逆クロスに打つため、コッキナキスは体が開き、右方向へのショットはことごとくサイドアウトとなった。錦織がミスショットを誘発していた、ということだ。

 第1セットではコッキナキスの強みが発揮されたが、試合が進むにつれ錦織は長所を巧妙に消した。最終セットでは、相手の引き出しにある武器をすべてさらけ出させ、ボロボロにしてしまった。(亜大教授、テニス部総監督)