アメリカンフットボールの日大選手から悪質タックルを受けた関学大選手の父親が、大阪府警に被害届を提出したことを受け、元東京地検検事の若狭勝弁護士が21日、取材に応じ、今回の事案が刑事事件として懲役刑を問う裁判になる可能性を指摘した。

 スポーツの世界で、例えばボクシングで相手を殴打しても暴行罪に問われないのは、刑法の「正当な業務による行為は罰しない」という規定が根拠にある。また、プレー中の接触で負傷や事故があっても、わざとではないというのが前提で、違法性は問われないのが基本的な考えだ。

 しかし、今回は「映像が残っていて、全然関係ないところでタックルしているのは明々白々。たまたま事案がグラウンド上で起こったというだけで、罪に問うことは全然問題ない」とし、「警察も当然、立件するでしょう」と話した。

 捜査のポイントは選手だけでなく、日大・内田前監督の指示の程度。指示が「命令」程度であれば監督が主犯、「そそのかし」程度であれば教唆犯として認定される可能性があるという。「示談が成立すれば起訴猶予、そうでなければ最高50万円の罰金刑では」と解説。ただ、事案が悪質なだけに検察が公判請求する可能性も否定できないという。

 悪質とする理由を「競技中であれば大丈夫という、スポーツを隠れみのとしている点」とし、「うらみつらみや、敵の力を弱めるなどの目的でやっているなら厳しく対処すべきだ」と断じた。会見で具体的な説明が一切なかった内田前監督についても「政治、行政で今起こっている問題の悪いとこ取りをしたような対応だ」と厳しく言った。

 19年ラグビーワールドカップ(W杯)、20年東京オリンピック(五輪)を目前に控え「スポーツを隠れみのにしたら反則も薬物も、処分されるんだと改めて認識する機会になると思う」と述べた。