背筋を伸ばし、前を見据えた内柴正人被告(34)の声は少しかすれていた。「準強姦(ごうかん)は絶対にしていない」。東京地裁で12日開かれた初公判。アテネ、北京両五輪で金メダルに輝いた柔道家は表情を変えぬまま、はっきりと無罪主張した。

 公判中は終始冷静だったが、閉廷直前には張り詰めた感情が抑えられなくなったのか、急に涙ぐみ、目頭を押さえる場面もあった。

 白のポロシャツにベージュ色のズボン姿で出廷した内柴被告は、筋肉がはち切れんばかりに盛り上がり、以前よりややふっくらとした様子。傍聴席を見回した後、弁護人の前の席に座り、拳を握り締めて開廷を待った。

 起訴内容の認否で弁護人から書面を手渡されると、両手で持ち、よどみない口調で朗読。「性的関係を持ったことは事実で、関係者に迷惑を掛け申し訳ない」と謝罪した上で「裁判が始まれば真実は明らかになると信じてきた」と、あらためて無罪を強調した。

 証拠調べの間は真っすぐ前を見据え、落ち着いた様子だったが、終盤に入ると、表情が一変。赤く充血した目を、指や手の甲で何度もこすり、顔を小さくゆがめた。

 被害者参加のため傍聴席と法廷との間には遮蔽(しゃへい)板が設置され、物々しい空気だった。