日本航空の女子バスケットボール部が1日、最後のシーズンに向けて都内で始動した。同部は本社の経営合理化策の一環で、10-11年シーズン限りでの廃部が決まっている。人件費削減のため、選手は昨季の16人から12人へ。練習着はメーカーの古い在庫品から提供を受けるように交渉するなど、地道な節約も重ねている。同時に選手たちは、即廃部ではなくあと1シーズン戦える喜びをかみしめつつ、10月開幕のWリーグで最初で最後の優勝を目指していく。

 「JALラビッツ」の愛称で親しまれた日本航空女子バスケットボール部が、最後のフライトに向けて準備に入った。この日、羽田空港近くの体育館で今季初練習。まず円陣を組み、荒監督が「後で『この1年、やってよかった』と(周囲に)言われるようにしないと」と“余命1年”の大切さを諭した。

 選手は12人。現役続行を望む4人を含む6人が退団した。新人は3人獲得の予定が、1人は廃部決定を受けて、他チームへ進路を変えた。「人数が多ければいいというものじゃない」と荒監督は言うが、ぎりぎりの人数であることには違いない。日本代表の高橋が、この日午後から代表合宿のためチームを離れた。故障者が2人出たら、5対5の練習はできない。専属コーチも不在になり、指導は荒監督と選手兼コーチの矢代だけ。この日は矢代が新人のシュート練習を積極的に指導した。

 女性らしい細やかな節約もある。契約メーカーに、練習着などは新モデルの購入ではなく、古い型で倉庫に眠っているものを無料提供してもらうよう交渉。既に昨季も厳しく経費削減を進め、総務担当者が「どこに切り詰めるところが残っているのか」と話す中、自転車通勤案も浮上した。寮から練習場まで、電車なら片道150円で約10分のところ、約30分かけて自分の足で通う案だ。

 ただ、ボールを追う選手の表情に悲愴(ひそう)感はない。岩村主将は「残り1年ラビッツとして戦えるのはありがたい」と笑顔で話す。荒監督は東芝の監督時代にも、廃部を経験。当時は「最後だから、みんな試合に出してやりたい」と情が先走り、勝利がつかめずに最下位で終わった。「今回は、そんなことはできない」と勝負に徹する構えだ。有終の美こそ、本社やファン、社会への恩返しと誰もが思っている。【岡田美奈】