<フィギュアスケート:4大陸選手権>◇3日目◇19日◇台北

 浅田真央(20=中京大)が63・41点で2位につけ、世界に復活の兆しをしるした。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)こそ回転不足を取られ、悔しさをあらわにしたが、それでも点数が出やすい国内大会の昨年12月の全日本選手権に、あと2・81点差にまで迫る出来栄え。どん底の印象しか与えてこなかった世界のジャッジに、連覇を狙う世界選手権を前に好印象を残した。安藤美姫(23)が66・58点の今季ベストで首位。鈴木明子(25)は6位と出遅れた。

 わずかだった。浅田が最初に挑んだトリプルアクセル。半回転…いや、4分の1回転足りなかった。それだけで6点近くを失った。それでも63・41点は、点数が高く出やすい昨年全日本選手権に匹敵する数字。「得点のことは気にしていなくて、今日の演技に関して、すごく悔しい気持ちでいっぱい」と、残念がった。

 3回転半にすべてを集中していた。演技直前の6分間練習は、2度目の挑戦で成功して終えた。勢いに乗ったかに見えた。だが、思いが強すぎた。演技開始位置につく前に、何度も入りをイメージしすぎた。「一番大事な本番で、しっかりとした冷静な気持ちで臨むことができなかった。一発(勝負)の難しいところです」とため息をついた。

 それでも、この後悔こそが成長の証しだ。3回転半は失敗こそしたが転ばずに耐え、以降の演技はすべてプラスの評価。50・10点が最高だった国際大会で、世界のジャッジに復活の兆しを見せた。「ジャンプ(3回転半)以外は良かったので、そういう部分では悔しい」と、苦笑いが出た。

 昨年の苦悩は、もうとうに通り越した。全日本を終えた直後の1月3日。佐藤信夫コーチの69歳の誕生日に、ともに教わる小塚と相談して肩から提げる高級バッグを贈った。「今まで、あまりにみすぼらしいカバンを提げていたからでしょうね」と同コーチは照れ笑いを浮かべたが、浅田からはもちろん、長年教える小塚からも初めてのプレゼントだったという。浅田が促して実現した、支えてくれる周囲への恩返し。心にゆとりができた証拠だった。

 台湾入り後は小籠包にも舌鼓を打った。十数種類もある名物料理に「全種類制覇したい」と言って、ともに食した小塚らを驚かせたほど。昨年はなかなか見せられなかった「天真らんまんな真央」は戻っている。

 「今日は全日本よりもすごくいい緊張感で滑れた。明日は世界選手権のためにつながる演技ができれば」。フリーでは再び3回転半に挑む。あとわずかの自信をつかむため-。完全復活の光は、すぐそこにある。【今村健人】