バンクーバー五輪女子金メダルの金妍児(20=韓国)が、今大会を最後に第一線から退く可能性が高まった。前日26日の公式練習後、報道陣から「今大会だけ、なぜ出場したのか」と問われると「五輪の金メダルですべての目標を成し遂げた。今大会は、皆さんに感謝の意味も込めて、新しい私を見てほしかった」と説明した。感謝と惜別。2つのメッセージを送るために再び世界の舞台に立った。

 五輪後も一時は引退を考えたが関係者からの必死の説得で思いとどまった。1年間の沈黙を破る今大会。すべての思いはフリー曲の「アリラン」に込めた。正式名称は「韓国へのオマージュ」。アリランを基本として編曲され、荘厳な調べが心を揺さぶる。「支えてくれた母国・韓国の人々へのラブレターの意味もある」。最後だからこそ母国へ最大の思いを込めた曲を選んだ。

 公式練習では連続3回転ジャンプは2度とも完璧な着氷。25日の練習では同じグループの中国選手と接触しそうになったが、寸前でかわして事なきを得た。「調子は上がってきている。何の問題もない」。世界最高合計点228・56点など女子フィギュアの歴史を塗り替えた銀盤の女王。その幕を閉じる日が近づいている。