【秦皇島(中国)8日=阿部健吾】中国で「アロハ~」。ベスト8入りでロンドン五輪出場が決まるアマチュアボクシングの世界女子選手権(中国)は11日に開幕する。ミドル級代表の「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと山崎静代(33=よしもとクリエイティブエージェンシー)はこの日、初の公式練習に臨んだ。女優経験もある山崎に、代表仲間から持ち上がったのは、出演した映画「フラガール」にちなんだ応援プラン。試合会場で「アロハ」の掛け声をかけ、少しでも緊張をほぐしてもらう。

 ちょっと場違いな声援が、山崎の背中を押してくれる。他階級の代表選手が「やっぱり、しずちゃんといえば『フラガール』でしょ」と提案。悲願のロンドン切符へ緊張が高まるだろう試合会場で、スタンドに陣取った仲間からハワイの代表的なあいさつ「アロハ」の声が聞こえてくる。フライ級の箕輪は「少しでもリラックスしてくれるかな」と期待し、計画を聞いた山崎は「そうなんですかぁ」と思わず目を細めた。

 07年2月の第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた「フラガール」(06年公開)は、福島県いわき市の「常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)」の誕生と成功を描いた物語。山崎は炭鉱で働く父と暮らす娘役で、フラダンスチームの1人を演じ、同アカデミー賞で優秀新人賞を受賞した。「人生を変えた作品です。4カ月間フラダンスの練習をしました。特にタヒチ、早いリズムできつかったですね」と振り返る。実際に撮影後にはハワイでフラダンスを踊るなど、心のよりどころになっている1本だ。

 そこで慣れ親しんだのが「アロハ」のあいさつ。「ハワイではどんなときでも言いますね。試合会場では…。良いと思いますよ」と照れくさそうに、仲間に感謝した。ブーイングの可能性もある。中国での試合で救いの声になるかもしれない。

 現地入り2日目のこの日は、早朝にランニングを行い、午後には試合会場を視察した。「なんかリングが小さく感じましたね」との感想に、梅津トレーナーは「それは良いこと。緊張していたら大きく見えてしまう。冷静だということだから」とうなずいた。

 午後5時から公式練習に参加。不用意にあごが前に出る悪癖に改善が見られ、樋山監督も「しっかりとガードができている」と成長を感じ取った。外国人選手に交じって汗を流したが「同じ人間という気持ちで変に劣等感を持たずに一人間として戦う」と強気に話し、汗をぬぐった。