<フィギュアスケート:スケートアメリカ>◇19日◇ワシントン州ケント

 昨季世界選手権銅メダリストの羽生結弦(17=東北高)が、SP世界歴代最高となる95・07点を出し、首位発進を決めた。4回転などのジャンプに加え、コーチを代えて基礎から見直したスケート技術でも成長を証明。高橋大輔(26)の持っていた最高記録を1・07点塗り替えた。

 今季の開幕を告げるGPシリーズ初戦。日本のホープがいきなり世界を驚かせた。演技後に右拳を高く突き上げた羽生。観客総立ちのなか、端正な顔で深く息をついた17歳に、もはやあどけなさはない。激しく肩で息をしながら、幾度もうなずく。「95点も出るとは思わなかった。びっくりした」と目を丸くしたが、圧倒の2分50秒だった。

 哀愁のギターサウンドが大人のムードを醸し出す。ゲイリー・ムーアのエレキギターが奏でる「パリの散歩道」の曲に乗り、氷上を華麗に舞った。冒頭の4回転トーループを鮮やかに降りると、今季から演技後半のジャンプの基礎点が1・1倍になる新ルールも最大活用。難しい入り方の3回転半、連続3回転を完璧に決めた。高得点をルール改正によるものと分析し、「驚きすぎずに受け止めたい」と冷静に振り返った。

 コーチ変更の大きな決断が、確実に成果に結び付いた。4月、バンクーバー五輪で金妍児を金メダルに導いたブライアン・オーサー氏に師事。拠点をカナダに移したのは、滑りを一から見直すためだった。幼少期に徹底的に教え込まれた、スケーティング技術の再特訓の日々。ジャンプ偏重で不足していた基礎を、体重移動の確認から始め、重点的に取り組んだ。この日の芸術要素の平均は8点台後半。7点台中盤だった昨季に比べ、「スケート技術」の項目など、大幅に高得点を並べたのは、間違いなく原点回帰のたまものだった。

 仙台出身。昨季は東日本大震災の被害に苦しむ郷里のため、万感の思いを込めて世界選手権でメダルを勝ち取った。いま、目指す舞台は1年4カ月後のソチ五輪。オーサー・コーチが「彼にその力があると知っているから、得点にも演技にも驚かない」と語る驚異の17歳。「フリーでもいい演技をすることで成長を見せることができる」。驚きはまだ序章にすぎない。

 ◆羽生結弦(はにゅう・ゆづる)1994年(平6)12月7日、仙台市生まれ。08年に初出場した全日本選手権で、出場選手中最年少ながら8位に入り注目される。09年ジュニアGPファイナルを14歳の史上最年少で制覇し、10年には世界ジュニアも制した。11年シニア転向。11年ロシア杯でGP初優勝。11年全日本選手権3位で出場した12年世界選手権では、ISU公認大会の総合得点の自己ベスト251・06で銅メダルを獲得した。171センチ、53キロ。