<テニス:デ杯ワールドグループ>◇1回戦◇2日◇東京・有明コロシアム

 世界12位の日本が歴史的な勝利で、世界グループ史上初の8強入りを果たした。第1試合でエースで世界18位の錦織圭(24=日清食品)が、同119位のダンセビッチ(29)を破壊。6-2、1-0とリードした時点で、ダンセビッチが腹筋を痛め棄権した。日本は最終試合を待たずに3勝目を挙げ、同7位で、昨年4強のカナダを撃破した。準々決勝は4月4日から、前回大会優勝のチェコと、今回と同じ有明コロシアムで対戦する。

 これが世界に誇る日本のエースだ!

 けがや痛みに泣かされたガラスのエースはもういない。11年のウズベキスタン戦に続く自身2度目の錦織3連投。同じ3連投でも、壊れたのは相手だった。「3勝できるのは気持ちいいですね」。気温が下がる夕日の中で、歴史的な勝利のシャンパンを浴びた。

 わずか3セットで完勝した第1日。「少し(体力に)不安はあった」と言うが、頼まれれば意気に感じ、胸を張って引き受けた第2日のダブルス。そして、最終日のこの日。第2セットの1ゲーム目で、相手が腹筋を痛めて棄権した。拍子抜けの幕切れだが、日本男子の歴史は、間違いなく錦織圭の手で動いた。

 実は、熱はないが風邪をひいていた。1月の全豪からせきが引かない。それでも、大会前の「最低でも2勝」という公約を果たすどころか、3連投で全勝。獅子奮迅の錦織劇場にも「筋肉痛はあるが、まったく問題はない」と、体は悲鳴さえ上げていない。しかし、さすがの重責に「精神的なダメージはある」と、ようやく振り払った日の丸の重みを感じた。

 昨年の後半から、徐々に体の痛みは消えていた。「試合の体への影響が大きく変わってきた。昔あった痛みがなくなっている」。左ひざは、サーブの着地で膝が曲がらないようなトレーニングをすることで、痛みが引いてきた。痛みがなくなることで、トレーニングの回数も増える相乗効果。最高の体ができあがった。

 今大会後、次戦は10日開幕の全米室内選手権を皮切りに7連戦が続く予定だ。年頭からは、非公式戦も入れれば約12週間で10大会の出場というハード日程。それも「大丈夫」という。全豪8強入りを果たした12年も、似たスケジュールだったが、全豪後にはすでに疲弊していた。

 カナダは、同11位のラオニッチ、同25位のポシュピシルをケガで欠いた。ツアーの激しさを物語るが、それも錦織のコンディションの勝利だ。今年の日本チームの合言葉は「日本のテニスの歴史を変えよう」だった。その歴史は、錦織の手で塗り替えられ、4月、再び新たな歴史が作られる。【吉松忠弘】