<テニス:ソニー・オープン>◇28日(日本時間29日)◇米フロリダ州マイアミ

 世界21位の錦織圭(24=日清食品)が左足付け根のケガで、準決勝を戦う前に棄権した。同2位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦予定だったが、2月の米デルレービーチ大会2回戦で棄権したケガの痛みが増した。今大会では4回戦で同4位のダビド・フェレール(スペイン)、準々決勝で同5位のロジャー・フェデラー(スイス)を破る快進撃を見せた。

 うつろな目が、悔しさを表していた。棄権を発表してから約30分後。会見に現れた錦織は重い口を開いた。「できるだけのことはした。コートに立つだけは可能だったけど戦うことは無理。本当に申し訳ない」。快進撃後のケガに、言葉の端々から無念さが漂った。

 前兆はあった。フェデラーからの大金星にも、決して大きな喜びを見せなかった。「かなり痛みを感じていて。でも、アドレナリンで最後まで乗り切った」。しかし、前夜は「寝返りしても痛かった。気持ちで乗り切れる状態じゃなくなった」。この日の練習はほとんど動けず、頭を抱えてコーチと話し込んでいた。

 2月時点での診断は、軽い炎症。MRI(磁気共鳴画像装置)でも大きな異常は認められなかった。その後も、痛みは「痛くなったり治ったり」。だましだまし続けてきたが、3時間のフェレール戦、2時間のフェデラー戦と連日の激闘に、患部が耐え切れなくなったようだ。

 棄権とはいえ、トップ5からの連勝は色あせない。「1番と言っていいほど充実した週だった」。痛みを抱えながら、フェレール、フェデラーに勝てる力は「強くなっている証拠」だとも言う。この日、早々と日本に向けて旅立った。国内で主治医に診断を仰ぐ。

 次戦は4月4日開幕の国別対抗戦デ杯世界グループ、チェコ戦(有明コロシアム)の予定。「いくらデ杯とはいえ無理はできない。いけそうであればもちろん出る。少しでも痛みがあれば難しい」。まずはこの先の欧州遠征に向け、体のケアを優先させる。【吉松忠弘】