<男子テニス:バルセロナ・オープン>◇シングルス決勝◇27日◇バルセロナ

 世界ランク17位の錦織圭(24=日清食品)が、クレーコートのツアー大会を初めて制覇し、ツアー通算5勝目を挙げた。同65位のサンティアゴ・ヒラルド(コロンビア)に6-2、6-2で勝ち、左股関節の故障から約1カ月ぶりの復帰戦で、2月の全米室内選手権に続く今季2勝目。同じクレーで行われる4大大会の全仏オープン(5月25日開幕・パリ)に弾みをつけた。今日28日に発表される世界ランキングでは昨年9月以来の12位に浮上することが確定。目標の世界トップ10入りが現実味を帯びてきた。

 歴代61人の優勝者が刻まれた銀のトロフィーを、錦織が誇らしげに掲げた。テニス王国スペインの赤土の舞台を、ついに制した。「欧州の伝統ある大会で結果を残せてうれしい。簡単な試合ではなかったが、このタイトルを獲得できたのは大きな自信になる」。73分。わずか4ゲームしか落とさない圧勝で、両手を青空に突き上げた。

 決して絶好調ではなかった。第1サーブの確率が悪く、滑り出しの第2ゲームでサービスゲームを落とした。緩急を交えて揺さぶってきたヒラルドに、リズムをつかめず0-2と嫌なスタート。しかし、鉄壁のストロークは健在だった。

 第3ゲームでヒラルドのサービスゲームを破り返すと、一気にエンジン全開だ。相手が下がっているのを見ると、ドロップショットで揺さぶるなど得意の組み立てで8ゲーム連取。あっという間にひっくり返し、そのまま逃げ切った。

 昨年まで地元スペイン勢が11連覇していた大会。全仏8度の優勝を誇るナダルが象徴するように、テニス界では赤土はスペインの代名詞だ。過去61回の歴史を振り返れば、スペイン勢が決勝に進まなかったのは26回。そこに178センチの小柄な日本人が優勝者に名前を刻んだのは、日本テニス界にとって金字塔である。

 今年からコーチに就任した元世界2位のマイケル・チャン氏の存在も大きい。「相手がナダルであろうが誰であろうが、勝てると信じて戦え」が口癖の同氏が、17歳3カ月の4大大会史上最年少で優勝したのが89年の全仏。175センチと錦織よりも3センチも低い身長で、赤土を制した精神力から学ぶことは多かった。

 次戦は5月4日開幕のマスターズ大会マドリードオープンだ。昨年、フェデラーを破って8強入りした思い出の地で上位に進出すれば、念願のトップ10入りもあり得る。錦織の快進撃は止まらない。

 ◆ヒラルドとの対戦

 過去5戦で錦織の4勝1敗だった。初対戦は、錦織が初出場した10年全仏の1回戦。09年に右肘を手術した錦織は当時、世界ランク246位。58位のヒラルドに最初の2セットを奪われたが、続く3セットを奪い返して逆転勝利した。これが唯一のクレーコートでの対戦だった。直近では3月のBNPパリバOPで錦織がストレート勝ち。

 ▼男子世界ツアーの大会カテゴリー

 ランクでは上から4大大会、マスターズ、500シリーズ、250シリーズの各大会がある。バルセロナオープンは、12年に優勝した楽天ジャパンオープンと同じ500シリーズ。錦織が4強に進出した3月のソニーオープンはマスターズのカテゴリーとなる。