日本バスケットボール界への制裁が事実上確定した。29日、日本協会は臨時理事会を開き、国際連盟(FIBA)から10月末までに回答を求められたガバナンス(統治)問題、リーグ問題などの提出書類を承認。しかし、最終案はまとまらずに途中経過にとどまり、解決できない場合にFIBAが明言する国際試合出場停止処分が回避できなくなった。16年リオデジャネイロ五輪予選が控える来夏までの解除を目指すが、既存の執行部による組織運営の継続が決まり、進展は不透明なままだ。

 臨時理事会後の会見。質問が出尽くした最後に、「1つだけ言わせてください」と日本協会の丸尾充会長代行が切り出した。

 「国際連盟から一番大事なのはガバナンスと言われている。当たり前のことを当たり前にやれる仕組みになってないのを、協会としても問題視している。当たり前の仕組みを作ることが大事なのではないかな」

 一瞬、会場に失笑が漏れた。当たり前にできないからこそ制裁措置を突きつけられた中、当たり前にできなかった執行部の副会長だった丸尾氏の言葉は説得力を欠いた。

 臨時理事会では迷走が続いた。23日に統一リーグ問題が合意に至らない責任を取って深津前会長が辞任。善後策を協議するはずが、冒頭で丸尾氏が辞意を口にした。結局は慰留されたが相次ぐトップの辞意は、組織として機能不全に陥った証左だった。

 その後の話し合いではFIBAから回答を求められた(1)ガバナンス(2)代表の強化(3)リーグの3項目の回答文書を承認したが、最終案には至らず。特にナショナルリーグ(NBL)とTKbjリーグの併存が問題視されたリーグ問題では、参加要件などで平行線が続き、正式合意は断念。期日までに国際連盟の要件を満たしておらず、制裁が科されることになる。

 今後は制裁前提で、いかに来夏に予定されるリオ五輪に影響なく解除にこぎつけるかが焦点になる。この日の理事会では執行部の責任を問う声は出ず、「責任の取り方はいろいろある。やめれば済む話じゃない。頑張ろうと一致団結できた」と丸尾氏は説明した。ただ、11月5日の選考委員会を経て決まる新会長については「私ですか?

 わかりません」と言葉を濁した。

 リーダーとしての意識の薄さが際立つ会長代行に先導される組織。「一致団結」しても、その実行能力には疑問が残る。【阿部健吾】

 ◆FIBAの制裁期間

 各ケースで異なる。昨年、男子リーグの政治介入問題があったレバノンには、1年間の国際活動停止処分が科された。協会内の対立があったスロバキアでは、昨年のU-17女子世界選手権の開催権を大会直前に剥奪されたが、問題が解決されたとして大会自体には参加したケースもある。日本が制裁を受けた場合でも、早急に問題解決に動くことが制裁解除につながる。<日本バスケットボール協会の資格停止問題の経緯>

 ◆08年7月

 FIBAのバウマン事務総長が日本のトップリーグが普及、強化の観点からNBLとbjリーグの2つに分かれていることを問題視。日本協会は「トップリーグ検討委員会」を設置した。

 ◆13年12月

 バウマン事務総長が緊急来日。トップリーグの統合が実現せず、運営、強化面で統治能力のなさを露呈する日本協会に激怒。「このままでは東京五輪開催国として出場させるか検討しなければならない」と警告。

 ◆14年4月

 バウマン事務総長が再び緊急来日。10月末に回答期限を設け、それまでにトップリーグの一元化、ガバナンスの改善がなければ、国際大会に出場できない資格停止処分を含めた罰則を科す考えを示した。

 ◆14年6月

 日本協会は2年後の統一を目指し「新リーグ組織委員会」を立ち上げ、NBLとbjリーグの話し合いを開始。チーム名称から企業名を外す骨子案をまとめたが、実業団リーグの流れを組むNBLの企業チームが反発。両者の話し合いは平行線が続く。<FIBAのバウマン事務総長の警告文(要約)>

 (1)現在、日本には2つのトップリーグが併存している。この状況は日本協会が日本のバスケットボールを完全に管理できていないことを意味しており、FIBAの基本規定違反だ。

 (2)トップリーグの統一を実現するためには、日本協会の組織と規律体制の改革が必要。16年から24年の長期にわたる日本代表の強化プログラムの戦略的な計画を導入する必要がある。

 (3)日本の高校組織は多くの大会を開催している。そのうちのいくつかは、ユース世代の国際大会の開催時期と重複(全国高校総体とU-17世界選手権)。日本の高校が、ユース代表チームに選手を出したがらない事態が起こっている。それは日本のバスケットボールの発展に多大な悪影響を及ぼしている。