<水泳世界選手権:競泳>◇27日◇イタリア・ローマ

 競泳男子100メートル背泳ぎ予選で入江陵介(19=近大)が順当に決勝進出を果たした。予選で53秒00の好タイムで2位通過すると、準決勝では52秒73で3位突破。26日は日本勢が1人も決勝に進出できなかったが、エースが嫌な流れを断ち切った。同種目の古賀淳也(22)が入江が持つ日本記録を更新する52秒39でトップ通過。世界記録保持者のピアソル(米国)はまさかの準決勝敗退となった。

 決勝進出を果たした入江は険しい表情を崩さなかった。50メートルの折り返しは3位通過。終盤の巻き返しを図ったが、予選のような伸びは見せられず、同組だった古賀に自身が持つ52秒56の日本記録を0秒17更新された。それでも決勝の舞台に立つ最低限の責務は果たした。

 予選では地力を見せた。周囲が失速する中、ラスト15メートルから伸び、53秒00。自己3番目の好タイムで予選2位通過を決めた。「前半を抑えて、後半もリラックスして大きく泳げた。予選としてはよかった」と余力十分だった。

 ラバー製の高速水着を着用して、予選で大会新をマークしたウィルデブール(スペイン)ら新鋭は多い。だが今月の全米選手権で100、200メートルとも世界記録を更新した最大のライバルとみられていた五輪通算5冠のピアソルがまさかの準決勝敗退に終わった。決勝で入江が自分の力を出し切れば金メダルを獲得するチャンスが広がった。

 水着の性能が高まり、今大会は各種目で予選通過タイムが飛躍的に上昇。従来、入江は英スピード社のレーザー・レーサー(LZR)を愛用していたが、この日のレースではデサント社のラバー素材を用いたものを着用。LZRは他社の最新水着に押され、デサント製もラバー素材を使用する割合が海外メーカーより少ないなど、現在は世界の主流からは外れている。それでも入江は「一番いい結果が出ていたので」と選択に迷いはなかった。

 水着問題で5月の日豪対抗200メートルで出したタイムが国際水連から認可されず、幻に終わった苦い経験がある。だからこそより良い水着を探すことよりも、自身の泳ぎを高めることに尽力してきた。「(余力が)まだある。決勝は切り替えていきたい」と入江。水着ではなく泳ぎで勝つ。【高田文太】