今年1年を締めくくる冬巡業最終日を両横綱がそろってサボった。20日、沖縄・石垣島での八重山巡業2日目の朝げいこを、初場所(1月11日、両国国技館)で進退をかける横綱朝青龍(28=高砂)と横綱白鵬(23=宮城野)が無断で欠席した。トップ2人の不在が影響してか、他の力士もけいこ場に姿を見せたものの、土俵に上がったのはわずか15人だけ。土俵外で事件、不祥事が相次いだ1年だったが、力士たちに名誉挽回(ばんかい)の意欲さえ感じられない巡業の締めとなった。

 むくんだ顔が、サボリの理由を語っていた。午前11時50分、けいこ終了から1時間以上たって会場入りした朝青龍がポツリと言った。「昨夜(巡業の)最後だから、お別れ会をしたんですよ。だからオレだけじゃなく、みんなつぶれていると思うよ。オレは風邪もひいているけど」。

 この日は白鵬も初めて巡業のけいこを無断欠勤。同11時8分につらそうな顔で会場入りした。報道陣の「飲み過ぎ?」の問いに「いや~」とごまかしたが、石垣島出身の歌手夏川りみの親族が経営するスナックで、関係者らと楽しく飲んでいたことは認めた。

 前日19日の八重山巡業はナイター開催で午後9時に打ち出しだった。さらに石垣島での最後の夜とあって、深夜まで盛り上がったようだ。しかし、20日は今年1年を締めくくる巡業最終日。角界を代表する横綱である以上「飲み過ぎ」は、午前9時からのけいこをサボる理由にはならない。実際、多くの関取衆は午前9時からのけいこに姿を見せていた。

 両横綱のたるみっぷりは他の関取衆にも伝染していた。「どんだけ飲んだか覚えていない」と話す日馬富士も、けいこに現れたのは終了4分前の同10時41分。さらにけいこの土俵に上がったのは計42人の関取のうちたった15人。稀勢の里ら屋外の土俵での「山げいこ」をこなした力士が数人、負傷を抱えていた力士もいたが、大半が土俵下でけいこを見守るだけだった。

 この低調ぶりに大島巡業部長(元大関旭国)の表情もさえなかった。「(両横綱から欠席の)連絡はなかった。今日は最後だし、ちゃんと来てほしかったよね」。一方で「昨夜はナイターで、変則日程だから難しいところはあった」と両横綱を呼び出して注意することもなかった。

 武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は就任直後の秋場所前に「巡業も含めて態度が悪い力士は、どんどん注意すべき」との方針を示したが、現実は理想とは程遠い。26日に開催する全協会員を集めた「研修会」では、協会トップによる強烈な引き締めが必要になりそうだ。【柳田通斉】