角界を汚染する賭博問題は、日本相撲協会トップにも及び始めた。武蔵川理事長(62=元横綱三重ノ海)が師匠を務める武蔵川部屋の元大関雅山(32)が、賭博行為を認める上申書を日本相撲協会に提出していたことが18日、協会関係者の話で分かった。野球賭博でないとみられるが、同理事長の責任問題に発展する可能性がある。時津風親方(36=元前頭時津海)と、境川部屋の前頭豪栄道(24)豊響(25)も野球賭博への関与を認める上申書を提出していたことが分かった。

 負の連鎖が止まらない。賭博への関与は、武蔵川理事長の弟子にまで及んでいた。雅山はこの日午後、合宿先の岡山から航空機で帰京。モスグリーンの浴衣に身を包み、賭博へのかかわりについて「協会と警察にお任せしていますので、何もお答えできません」と慎重に話し、それ以外は口を閉ざした。

 雅山は、最初に名前の挙がった大関琴光喜や、17日に関与が発覚した幕内豊ノ島、この日上申書の提出が明らかになった豪栄道、豊響と同じグループに属したとみられる。複数の関係者によれば、上申書で申告したのはマージャン、花札、トランプのたぐいだ。

 野球賭博に比べれば、暴力団とのかかわりは低いと見られるが、それも今後の警視庁による捜査次第。何より、15日の会見で「全部ウミは出さないといけない」と連呼していた武蔵川理事長の監督責任に発展する可能性がある。同理事長は国技館を出る際、雅山についての質問に無言のまま。協会関係者にガードされながら、黒塗りの車の後部座席に乗り込んだ。

 協会内には「野球(賭博)じゃなければ、逃げ切れるかも」と、理事長辞任にまで及ばないとする見方がある。ただ、内部にくすぶる執行部への不満も見逃せない。今回の上申書で、自己申告をすれば処分を「厳重注意」にとどめると約束しながら、実際は調査資料を警察に渡し、捜査次第でそれ以上の厳罰を科す可能性が出てきた。これに反発する協会員は多く、ある若手親方は「自分のところの弟子が賭博をしておいて、自分だけのうのうと理事長の座に居座っているのは許さない」と憤る。

 北の湖前理事長(元横綱)は08年9月、弟子の白露山が尿検査で大麻に陽性反応を示した引責で辞任。当時、事業部長だった武蔵川親方が引き継いだ。今回もまた、弟子の不祥事が理事長の進退に影響するのか。相撲協会は、21日に理事会と、この問題の調査チームの第1回会合を開く。