日本相撲協会に、またまた激震が走った。暴力団関係者のビルを宿舎に使用したと疑われている松ケ根部屋の力士2人が、野球賭博を行っていたことが12日、明らかになった。この日の夜、松ケ根親方(53=元大関若嶋津)が、十両・松谷(26)三段目・若力堂(23)とともに両国国技館で会見した。相撲協会が6月に行った上申書やその後の特別調査委員会のアンケートでは申告せず、警視庁の捜査で発覚したことを告白、謝罪した。

 松ケ根親方に、警視庁から電話連絡があったのは7月28日だった。翌29日に当時の村山弘義理事長代行に連絡、30日に特別調査委員会のメンバーから事情聴取を受けたという。松谷、若力堂とともに「全国の相撲ファンの皆さん、本当に申しわけありませんでした」と10秒にわたり、頭を下げた松ケ根親方は憔悴(しょうすい)しきっていた。

 2人が野球賭博に手を染めたのは08年の3月から4月にかけての2カ月間。その1年前から出げいこに行っていた阿武松部屋で、一連の野球賭博の中心人物の幕下・古市(元大関琴光喜関への恐喝の罪を問われている元力士古市満朝被告の弟)に、松谷が誘われた。松谷が若力堂も誘った。松谷が1万円を15回、総額15万円を古市を通じてかけた。そのうち、5000円を3回、計1万5000円分が若力堂の分。警視庁が捜査で古市の口座に松谷から金が振り込まれていることから、野球賭博が発覚した。

 2人はすでに警視庁の取り調べを受けている。6月に上申書を提出しなかった理由について、松谷は「怖くて。テレビの報道で、暴力団がかかわっているとか、怖くて言い出せなかった」。若力堂も「(言い出す)チャンスは、何度かあったのですが、怖くて言い出せなくていた。話が大きくなっていって(ますます)言い出せなかった」とうなだれた。

 暴力団とのかかわりが取りざたされている大阪宿舎問題の渦中に、さらなる不祥事の発覚。警視庁から電話を受けたときのことを、松ケ根親方は「ビックリしました。誰に相談したらいいのかと、頭がパニクリました」と振り返った。さらに、上申書で報告しなかったことについて「指導方針も、自分でどうだったのかなと思います」と反省の弁を口にした。

 事情聴取に当たった、弁護士でもある特別調査委員会の長尾敏成委員は「本人たちは、暴力団とかかわりがあると認識していなかった。あくまでも、仲間内の遊びのつもりでやっていた」と言う。名古屋場所では親方12人、力士18人が、野球賭博がらみで謹慎した。2人も正直に申告していれば、最悪でも謹慎で終わった可能性が高い。

 松谷は「自分が言わなくて、大勢の人に迷惑をかけた。真摯(しんし)に受け止めたい」。若力堂は「そういう機会に言わなくて迷惑をかけたのでしょうがない」。黙っていたことで、松ケ根親方も含めて、より重い処分が予想される。また、この日の特別調査委員会で、大阪宿舎問題も継続調査が必要と判断されるなど、松ケ根部屋が存続の危機に立たされた。