坂本勇人の1発はさすがだった。初回4点を取った後、もう1点がなかなか出ないケースは多い。だがそこで簡単に「令和1号」を打って、白星をグッと引き寄せる。やはり何かを持っている男だ。

とはいえ「持っている」だけで打てるほど野球は簡単ではない。坂本勇の場合、右打者として左手の使い方が素晴らしい。内角に来れば肘を抜くようにしてさばき、外角球や低めの難しい球でも腕を伸ばして拾ってしまう。ストライクゾーンの中だけでなく、ボール1個から1個半、打てる範囲が広いのだ。

相手投手にとって、これは嫌なことだ。対応できる範囲が広いから、直球待ちの時に変化球を投げても泳ぎながらヒットゾーンに打球を飛ばされてしまう。本人もミート力、対応力に自信があるから余裕を持って打席に入れるし、その余裕が今日の本塁打のような好結果につながるのだ。

一方、先発の菅野もエースらしい投球だった。前回4月25日ヤクルト戦では3連発を浴びるなど7失点で敗戦投手となった。だが勝ち星を稼げる投手は2回連続で同じミスはしない。しっかり自分の投球を立て直し、今日は右打者外角への直球、スライダー、左打者への思い切りのいい内角球が効果的だった。

中日打線は特に序盤、左打者がその内角を簡単に見逃すシーンが多かった。6回の京田の右前打のように、厳しい内角球もどんどん振っていって、菅野にプレッシャーをかけていくべきだった。ただ、狙い球を絞ったとしても投手が良ければ打てない時はある。菅野のデキをほめるべきだろう。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 9回表中日1死満塁、菅野(右)はマウンドで宮本コーチと言葉を交わした後、小林にサムアップを送る(撮影・垰建太)
巨人対中日 9回表中日1死満塁、菅野(右)はマウンドで宮本コーチと言葉を交わした後、小林にサムアップを送る(撮影・垰建太)