ソフトバンク千賀はカットボール、スライダーの多投が目立った。久々に投球を見て、変化球投手なのかと思うぐらいだった。3回は森に対し、高めに浮いて制球できていないカットボールをカウント1-0から5球続けて四球。山川にはカウント0-2から外角に外すカットボールが甘く入り、2ランを浴びた。バッテリーとして外す意思は通じ合っていたと思うが、それでもミスするほど、この試合では精度の低い球種だった。

ローテに定着して5年目。直球とフォークというイメージが強い中で、勝負できる球種をもう1つ増やし、投手としての幅を広げたいという気持ちは分かる。中日での現役時に受けた川上憲伸も直球、カーブ、スライダー、フォークが持ち球だったが、後にカットボールを手にした。精度の高い球で、左打者には特に有効だった。内角に投じれば詰まらせ、芯で捉えてもファウルになる軌道だった。そんな球でも1~2年も続けると打者は対応してきた。川上は左打者の外角ボールゾーンからストライクに入れるバックドアのカットボールを磨いて、さらにその上を行った。

千賀も5回に源田からバックドアのカットボールで見逃し三振を奪うなど、修正も見せた。だがこの試合に限って言えば、カットボールは、まだ相手の直球の迫力とフォークの落差の残像を利用した球種にすぎない。狙ったところには2、3割ぐらいしかいってないだろう。勝負球にするには、この確率を上げていかなければいけない。

相手打者にとって一番嫌なのは、やはり直球とフォークだ。故障明けで、コンディションにも不安があるための選択だったのかもしれない。そうでなければ、イメージチェンジするには早い。まだ27歳。千賀らしい躍動感ある投球を見せてほしい。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対西武 3回表西武1死一塁、先発の千賀は山川に2点本塁打を浴びる(撮影・今浪浩三)
ソフトバンク対西武 3回表西武1死一塁、先発の千賀は山川に2点本塁打を浴びる(撮影・今浪浩三)