阪神は打線が狙った球に対してスイングできる時と、できない時の差がある。初回、近本の先制弾、梅野の二塁打で巨人サンチェスを攻めた。だが糸原は2ボールから低めのボール球のチェンジアップを振り、二飛に倒れた。

相手バッテリーからすれば、どうすればアウトが取れるか四苦八苦の状態。わざわざアウトになるような打撃をする必要があるのか。ベンチから進塁打のサインが出ていたかは分からないが、出ていないならヒットを狙いにいって、結果的に進塁打になればいい場面。糸原につなぎのイメージはあるが、3番として走者をかえす役割を考えれば、手を出す球ではなかった。

5番大山も2死二塁から内野安打になったが、内容は悪い。初球の高め直球をきちんと見逃し、変化球待ちの比重を感じさせたが、2球目の外角低めに大きく外れるカットボールを空振り。さらに2-1の打者優位のカウントから、狙っていない低めのチェンジアップを振り、ボテボテのヒットになったが、たまたまだ。

プラン通りにできる打席もある。糸原は2回2死一塁では待っていた直球を左前にはじき返した。陽川も初回2死満塁でカットボールに狙いをつけながら、直球をファウルでしのぎ、押し出し四球を選んだのは価値があった。

首位を独走する巨人との差は、対戦時の打撃成績に直結している。チーム打率は2割1分2厘と2割3分8厘。得点も49と75で下回る。無走者時は逆に2割1分5厘と1割9分3厘で上回るが、得点圏での2割5分と3割5分9厘は、巨人がチャンスで狙った打撃ができている表れでもある。

糸原、大山を含め、近本、梅野と固定できるメンバーが育ち、サンズ、ボーアも近年の助っ人補強では当たりだ。チーム力は上がっているだけに個々で内容の悪い打席を減らせるか。今カード最終戦は圧倒したが、巨人を倒すには年間を通して差を縮める必要がある。(日刊スポーツ評論家)