阪神85年日本一監督・吉田義男氏(87=日刊スポーツ客員評論家)が、古巣に猛ゲキを飛ばした。新型コロナウイルス感染などで混乱を招いた責任を取った揚塩球団社長のシーズン途中辞任を「お家の非常事態」とした重鎮は、常勝チーム作りの重要性を強調。拙守拙攻の逆転負けでDeNAに2差に迫られる中、「歯を食いしばって戦え!」と厳しく言い放った。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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まず最初にわたしが痛切に感じたのは、こんなに阪神を取り巻く状況が情けないのに、大勢のファンが甲子園に足を運んでくれていることでした。

これって当たり前の光景ではありません。もし観客で埋まったスタンドが当たり前、これが日常と思ってなにかを感じないのであれば、そこに“甘え”があるんと違いますか。

これだけ巨人に突き放されても、いくら逆転負けを喫しても、お客さんが見放すことなく応援してくれている。こんな幸せなチームありませんで。

わたしは殺風景な甲子園でプレーした時代も経験しているので余計に感じるんです。だからこそ一連の問題については、わたしとしても申し訳ない気持ちでいっぱいです。

揚塩社長が辞任を表明した一夜明けで、大事な一戦と思っていました。個人的には甲子園球場のリニューアルを主導するなど貢献したのを知るだけに気の毒でした。

今はお家の非常事態です。本社、フロント、現場がいかにこの有事を受け止めるのか。そして今後のチーム作り、編成、球団の在り方が問われる大事な時機にきている気がします。

昨季から続く守備力の低下も1つ。これってどんな検証してるんですか。例えば小幡の才能をいかに見極め、これからどう起用するかは非常に興味深いです。

近本、大山らの成長はうれしい。でも芽が出だした若手投手の伸び悩みは、どこに原因があるのか。守備については「守りで攻める」ことにも欠けてますわな。

阪神の監督はつらい。わたしもいくらでも負けてきた。自慢じゃないが、批判の的にさらされたのは、わたし以上の人はおらんでしょ。でも現実を甘んじて受け止めながら内心ではなにくそと思ってきた。

チーム一丸と一口で言っても、一丸になるのは難しい。そこには厳しさも必要ですわ。残り試合、歯を食いしばって戦い抜く。そんな姿をファンに見せてほしい。

阪神対DeNA 9回裏阪神無死、二ゴロに倒れベンチへ戻る近本(撮影・岩下翔太)
阪神対DeNA 9回裏阪神無死、二ゴロに倒れベンチへ戻る近本(撮影・岩下翔太)