配球に正解はないが、これだけはやってはいけないということがある。連敗中のDeNAが、それを犯しては必然的に苦しくなる。

5回、3点にリードを広げられ、なお2死一塁。4番村上にフルカウントとし「直球だけは行くなよ。フォークだぞ」と思ったが、捕手戸柱が内角に構えた瞬間に打たれると確信した。新人入江の内角に投げきれなかった直球で致命的な2ランを浴びた。

試合の流れ、打者に対する重要性を戸柱が理解していない。3失点後の次の1点は今の味方打線の力を考えれば重い。次が5番太田なら村上で勝負する必要はまったくない。選択するならボール球のフォークで歩かせてもいい意識で投げさせる。開幕して浜口ら先発投手の四球が目立ち、出してはいけないと感じているのだろうが、ここは四球を出してもいい場面だった。

入江は直球に力があり、村上に対しても1、2打席目から内角を攻めようとしていた。序盤は球にキレもある。2打席目は実際に2-2から戸柱が構えた内角から中へシュート回転したが見逃し三振に打ち取れた。村上も開幕から阪神青柳の外角直球を本塁打した1安打だけで、差し込まれる傾向にはあった。だがデビュー戦の入江が80球を超えて、キレもなくなってきた5回のあの場面で同じ選択肢はない。100歩譲って、外角直球で外に外れてもいいと考えるだけだ。

ヤクルトのバッテリーも6回に牧に3ランを許したが、対照的に納得できる配球だった。5点差の無死一、二塁で初球から振ってくるだろうという場面でフォークはうまく落ちればゴロを打たせられる球種。失投で1発を浴びたが、仕方がないと割り切れる。

DeNAはやってはいけないミスの数を減らすことが大事だ。長いペナントで浮上の目はまだまだある。(日刊スポーツ評論家)

DeNA対ヤクルト 5回表ヤクルト2死一塁、村上に中越え2点本塁打を許した入江(中央)の元に集まる選手たち(撮影・浅見桂子)
DeNA対ヤクルト 5回表ヤクルト2死一塁、村上に中越え2点本塁打を許した入江(中央)の元に集まる選手たち(撮影・浅見桂子)